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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
激闘編
第八十八話 国境会戦(後)
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れもそうだな。伸び代か…新しい世代の指揮官という訳か」
「はい。ウィンチェスター提督はこう仰っていたそうです。『ミューゼルという人物だけではなく、彼の周囲にも注目した方がいい』と」
「詳しいな。誰から聞いたのかね」
「キャゼルヌです」
「なるほど…では確かな話だろうな」


 
10月2日08:00
銀河帝国軍、帝国軍総旗艦ヴィルヘルミナ、
ウルリッヒ・ケスラー

 我々は再編成と休養にほぼ一日半を費やした。戦いは既に五日目になる。叛乱軍の艦隊戦力を殲滅し後日のアムリッツァ、イゼルローン要塞の奪回に備える…今出兵の目的はそれだが、内実は新編なった艦隊戦力の実力の把握にある。実力の把握といっても実際に叛乱軍と戦うのだし、後日に備えなくてはならない。勝利を確実な物とする為には性急な戦闘は避けねばならないし、再編成と休養に一日半を費やしたのもその為だ。司令長官は慎重だった。各艦隊の現状を細部まで把握し、充分に英気を養った。宇宙艦隊司令部に入るまでは、単純な力攻めに頼るのみの印象が強かったが、この戦いに参加してその印象は大きく変わった。外から見る者には慎重が鈍重に見えるのだろう。力攻めに見えるのもそのせいだ。だが、大軍には奇策は要らない。ただ前進し、攻めるのみだ。
「前進せよ」
司令長官が短く、間違えようのない命令を下す。まずはこの直衛艦隊と共にゼークト、シュトックハウゼン両提督の艦隊が前進する。
「叛乱軍との距離、十光秒、まもなく全火器の射程圏内に入ります…前方に熱源多数発生、叛乱軍、長距離砲による攻撃を開始しました!」
此方はまだ発砲していない。司令長官は長距離砲による攻撃は効果が薄いと考えておられるのだろう。長距離ビームを防ぐ偏向磁場が、時折明るく光るのが見える…当然ながら着弾し爆散する艦や行動停止、機能停止する艦も続出する訳だが、それでもまだ司令長官は発砲命令を出さない。砲撃を物ともせず距離を詰める帝国艦隊…司令長官は叛乱軍に大軍の圧力をかけようとしている…
「これは…中々肝が冷えるな」
「ああ、敵も味方もな。メックリンガー、卿が叛乱軍の指揮官ならどうだ」
「無言で近付く帝国艦隊…重厚で不気味さすら感じるだろう。我々の決意の強要…気の小さい中級指揮官なら後退するかも知れんな。そういう者達を叱咤するのに必死になっているかもしれん…こういう圧のかけ方もあるのだな、いや、勉強になる。犠牲は必要最低限という訳ではないから、中々真似出来るものではないがな」
勉強になる、だが真似は出来ない、か…まさしくその通りだ。攻撃をせずに敵に近付くというのは凄まじく度胸の要る行為だ。度胸だけではない、恐怖心を抑える自制心、胆力も求められる…現に背中は冷や汗でびっしょりだ、司令長官は各級指揮官だけではなく一兵卒に至るまでそれを求めているのだ、ミ
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