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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
激闘編
第八十八話 国境会戦(後)
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が殿軍となったマッケンゼン艦隊の犠牲により辛うじて撤退に成功…自分の指揮した戦いで一個艦隊の犠牲が出たのだ。トラウマとまではいかないだろうが、自分を追い込んだ相手に対しては穏やかな気持ちでは居られないだろう。

「ヤン・ウェンリーはともかく、ウィンチェスターに対しては含むところがあるだろうからな。そこを突かれたという訳か」
「うむ。叛乱軍第九艦隊の指揮官が他の者だったら、ミューゼル提督も気負うこと無く指揮出来たかもしれない。現に増援が出現するまでは整然と戦っているのだからな」
後退を決意したのもそれがあったからだろう。増援がウィンチェスター率いる第九艦隊と判明した。そしてその艦隊は目的の不明瞭な行動を取り出した。眼前の敵は頑強に抵抗している。その指揮官は『エル・ファシルの英雄』たるヤン・ウェンリー…。判断を阻害する不安定要素ばかりだ。自分がしてやられた様にメルカッツ艦隊もまた翻弄されるかもしれない。ミュッケンベルガー司令長官も明確に仰った訳ではないが、フォルゲンに派遣された艦隊の任務は警戒監視が主だ。極論すれば敵が居ても戦わなくていいのだ。おそらくメルカッツ提督はそのつもりでいただろう、だがミューゼル提督は攻撃を開始してしまった…。
「若さ故の過ち、かな」
「おいおい、随分と抽象的で感傷的な結論だな」
「そうだろう、閣下はまだ十九歳だ。経験が足りなかったのさ。閣下の経歴は参謀任務が主だ。指揮官や司令職は経験が無い。それに相手はウィンチェスターにヤン・ウェンリーだ、固くもなるだろうよ。ケスラー、十九歳の時…卿は何していた?」
「新米少尉だったよ」
「そうだろう?それを考えると十九歳で中将、そして艦隊司令官…考えただけで胃が痛くなる」
私の目となって欲しい、か…確かに私は、いや私だけではない、少なからずの者達がミューゼル閣下の推薦を受けて軍の表舞台に立つ事が出来た。彼には恩義がある、だがそれは彼に盲目的に従うという事ではない。ミューゼル閣下がこれから先下の者達の信頼を勝ち得る為には目に見える絶対的な功績が必要だ。例えば、次の宇宙艦隊司令長官は彼で間違いない、と思わせる様な……。
「どうした、突然黙り込んで」
「いや、何でもない」
ヤマト・ウィンチェスターとヤン・ウェンリーか…今のミューゼル閣下には高すぎる壁かもしれない…。


10月1日02:05
銀河帝国軍、帝国軍総旗艦ヴィルヘルミナ、
グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー

 メックリンガーとケスラーが何やら話し込んでいる。フォルゲンからの中間報告でも目にしたのだろう、ミューゼルが心配という訳か。ミューゼルは手許に置いた方がよかったかも知れんな、例え能力があろうともそれだけでは対処出来ない事が多すぎる。今しばらくは艦隊司令官として経験を積まねばならんだろう…。

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