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邪教、引き継ぎます
第四章
31.海底の洞窟へ
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男だった。
 中年でややふくやかな体型の彼の名は、ハンソン。紫色のマントを着用しており、ケイラスと同じく祈祷師の位を持っている。だか彼とは異なり物腰が柔らかであるため、各種族からの評判はすこぶるよい。今は仮面と頭巾を外しており、丸めの顔や茶髪があらわになっている。

「アレフガルドの竜王の城にも寄られてはいかがでしょうか? いまだ教団は他勢力との交渉が始められる状態ではないと思いますが、中立的な立場かつ温厚な性格と噂の竜王になら会っていただけるはずです。すぐ味方につけるのは難しいにしても、ごあいさつという形でフォル殿の顔を売っておくのは悪くないかと」

「いいねー。おれたちは少人数ならバピラスのおかげで空路を使ってすぐ移動できるもんね。他の勢力にはない能力を活用するのはいいことだと思うよ」

 竜王にも会えるかもしれないのか――と、さらに顔が緩むタクトではあったが、この感想は共感を得られたようだ。うなずく者多数。バーサーカーの少女も特に負の表情は取らない。

「ありがとうございます。それは良いお考えだと思います。距離はありますが、空からなら時間はかからないでしょう。海底の洞窟を見終わったら向かうようにしますね」

 フォルも同意する。脳裏には、かつて直属の上司であった悪魔神官ハゼリオがあいさつのために竜王の城に行ったことがあるという話をしていたことが浮かんでいた。

 ここで、怜悧(れいり)な声が挟まる。

「行くのはよいが、私が明確に反対だったという事実を記録に残しておいてもらおうか」

 祈祷師ケイラスである。こちらも仮面も外していた。

「ケイラスさんは反対でしたか……。差し支えなければ理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 数名から「またか」とうんざりした顔を向けられたことをものともせず、彼は一度金髪を()き上げると腕を組んだ。

「私はそもそも君がここを離れること自体に反対だ。外患はまだやってこないかもしれぬが、ロンダルキアには立て続けに信者の流入があり有象無象(うぞうむぞう)が渦巻いている状態。君が留守の間に神殿で何が起きてもおかしくない」

 その言葉に、数名のうちの一人だったシェーラが我慢できなくなり突っ込んでしまった。

「お前が言うなよ……お前こそフォルがいなくなったら真っ先に騒ぎを起こすんじゃないか? 他の種族と喧嘩になってな」
「黙れ」
「あ? お前そろそろほぼ全部の種族から嫌われてることに気づいたほうがいいぞ」
「まあまあ、シェーラちゃん」

 タクトがバーサーカーの少女の肩に手を当ててなだめる。彼女はそれを振り払ったが、いちおうは落ち着いたようだ。
 祈祷師ケイラスは一段と眉間の皴を深くすると、言った。

「そのようなくだらぬことを危惧(きぐ)
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