暁 〜小説投稿サイト〜
俺様勇者と武闘家日記
第3部
サマンオサ
その頃の勇者たち(ユウリ視点)
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
だろうが、俺たちが入っていた牢屋を先に見られたら、脱走したことがバレてしまう。
「俺たちは先に牢へ戻る!! お前はそのまま町に戻れ!!」
 バカザルの返事も聞く間もなく、俺とシーラは急いで元の牢屋へと向かった。バカザルがいないことがバレたら厄介なので、俺がマヌーサを応用してバカザルの幻影を作り出し、ひとまずは難を逃れた。
 それからどれくらい経っただろうか。腹の減り具合からして2時間は経っているが、あのバカは未だに帰って来ない。
「でもさ、案外るーくん2号と一緒に探してるかもしれないね」
「は!?」
 思考を遮られた俺は、起き上がりざまに振り向いた。
「どうする? るーくん2号があたしたちと一緒に旅したいです、なんて言ってきたら」
「戦闘の邪魔になるような奴はいらん」
 気持ち悪い笑みを浮かべる賢者を、俺はこれ以上余計なことを言うなと言わんばかりに睨み返す。
 こういうときのザル賢者は、大抵俺をからかって楽しんでやがる。
「でもるーくんさあ、並みの鍛え方してないよね。きっとあたしよりレベル高いかも」
「……」
 頼む。誰かこのおしゃべりな賢者を黙らせてくれ。
「顔も爽やか系のイケメンで、優しくて。さらに包容力があって、いざというときには頼れるくらい強い。なかなかこんなハイスペックな男子いないよ?」
「……何が言いたい?」
 自分でもわかるくらい、胸の奥からジリジリと焦げ付くような怒りがこみ上げてくる。いや、これを怒りだけで表すには到底物足りない。
「強力なライバル出現だね、ユウリちゃん」
 その瞬間。ぶちっ、と何かが切れる音が聞こえた気がした。俺はシーラに向き直るなり激昂した。
「俺には関係のない話だ!! 次くだらんこと言ったらもう二度と酒場に行かせないからな!!」
「ああっ!! それだけはやめてぇ!!」
 半泣き状態のシーラにひとしきり文句を言うと、再び俺は彼女に背を向けて寝転がる。だが、さっきの発言が気になってしまい、眠ろうと思ってもなかなか寝付けない。
 あの男といるときのあいつの表情を思い出し、俺は苦い顔を作る。ただの幼馴染みなら、再会しただけであんなに嬉しそうな顔をするものだろうか?
 いや、あいつのことだから、たとえどんな相手でも……、例えばその辺のジジイにでも、ああいう反応をするはずだ。
「……くだらん」
 そう言い聞かせようとしている自分がなんだかむなしくなり、俺はこれ以上考えるのをやめた。
「明日あいつがここに来たら、慌ただしくなると思う。今のうちに休んどけ」
 ぼそりと俺が忠告すると、一瞬の間を置いてシーラが何やらクスクスと笑い始めたではないか。
「何がおかしい!!」
 俺は顔だけシーラの方を向いて、眉間にシワを寄せながら尋ねた。すると彼女は、これ以上ないくらいニヤニヤしながら俺を
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ