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俺様勇者と武闘家日記
第3部
サマンオサ
その頃の勇者たち(ユウリ視点)
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かつての英雄のように、遠い流刑地へと送られてしまうかもしれない……」
「!! おい、それって……」
 逸るバカザルを制し、俺は再び老人に向き直る。
「その英雄というのはもしかして、サイモンのことですか?」
「っ!!」
 今まで生気を失いかけていた彼の顔が瞬時にして、何かを恐れているような切迫した様子に切り替わった。
「俺たちはサイモンの行方を探しています。ここに来る前にサイモンの奥さんに話を聞きました。彼は『祠の牢獄』というところに囚われていると。まさかサイモンを祠の牢獄に送るよう命じたのは、あなたですか?」
「違う!! 断じて私ではない!! それ以前から私はここに囚われていたのだ。彼をそこへ送るよう命じたのは……、私の偽物だ」
『偽物?』
 すると興奮したからか、老人は激しく咳き込み始めた。普段から人と会話することがなかったのか、あるいは病気にかかっているのか、この程度の会話でも彼にとっては相当の負担になるらしい。
「偽物って、王様が? てことは、あんたが本物の王様ってこと?」
 本物の王様と思しき人物を指さしながら声を上げる無礼者のバカザルを、俺は横目で睨んだ。おそらく彼は本物だ。この状況下でわざわざ王の名を騙るような発言をするのは無意味だからだ。
 それに、あの国王が偽物だとしたら、色々と合点がいく。玉座の間で俺たちがサイモンの名を出した途端、奴はおれたちの言い分も聞かず問答無用で俺たちを牢へ送った。国民を人と思わず、自己中で自分勝手な発言。あれが真っ当な人間なら正気を疑うレベルだ。
 その後途切れ途切れに話す国王の話は、どれも信憑性があった。約15年ほど前、サイモンが不在のこの国に奇妙な旅人がやってきたこと。その旅人が城にやってきた直後、城は魔物に乗っ取られてしまったこと。その旅人が実は魔物であり、その魔物が今度は自分と同じ姿に化けたこと。そしてその魔物の策にはまり、この牢屋に囚われてしまったこと――。
 それからずっとこの国は魔物が化けた偽物の王によって牛耳られている。国中の物価を上げ、国民に重税を課す。それに不満を持つ者がいれば問答無用で牢屋送りにする。牢屋に入った人間はいつの間にか忽然と姿を消しており、噂では偽物の王に殺されたのではないかと囁かれている。そもそもこの話はここから動けない国王が実際に目の当たりにしたわけではなく、いずれの話もこの城の兵士や従者から聞いた情報だという。
「私一人ではどうにもできず……こうして15年も無為に過ごしてきた。だが……君たちになら託しても良いかもしれん。頼む……。我が国の宝である『ラーの鏡』を……、取り戻してはくれないか?」
「ラーの鏡? それがあれば、あなたを牢屋からお救いすることができるのですか?」
 国王の話によると、ラーの鏡とはこの国では真実を映す鏡とも言われており、
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