暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
XV編
第206話:アリスの過ち
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ワイズマンは用意していた。曰く、言う事を聞いていれば何れは人間の体に戻してやると言うものだ。

 正直、その話を持ち込まれた時ミラアルク達は半信半疑であった。何しろこの話をされる直前、彼女達は目の前で今まで自分達を見下してきた錬金術師や何も知らない人々がサバトに掛けられ、体を溢れる魔力で崩壊させる様を見せられていたからだ。
 こんな光景を目の前で見せておいてから、言う事に従えば望みを叶えてやるなどと言われても正直信じきれるものではない。だが同時に、彼女達には他に頼れるものが無かったのもまた事実だった。彼女達は何としても普通の人間としての体に戻りたかった。組織から逃げ出したのも、実験が嫌だと言う理由以上に人間に戻りたいからである。それを叶えてくれると言うのであれば、神にも悪魔にも縋りたい思いであった。

 結局、ミラアルク達3人は実験にこそ使われないだけで組織の底辺として使われる日々を送る事となっていたのである。

 メデューサからの小言が頭上を通過するのを、只管黙って耐えるミラアルク。
 そこに第3者の声が響いた。

「儚きかな……」
「ッ!」

 そこに現れたのは風鳴 訃堂。深い皺が幾つも刻まれた顔の老人である彼は、しかし老人とは思えぬほどの覇気を纏った出で立ちでメデューサ達に近付いた。まさかの訃堂の登場に、メデューサも思わず姿勢を正す。だがそれは彼に敬意を払っているからではなく、彼が放つ強者の雰囲気に中てられたが故であった。

「風鳴、訃堂……!」
「あの男が出来ると豪語するから任せてみたが、結果はこの様か。何一つことを為せぬ、貴様らで果たして本当にこの国を守れるのか不安であるな?」

 訃堂の挑発するような物言いに、今度はメデューサが言葉を詰まらせた。魔法使いどころか錬金術師でもない訃堂を相手に下手に出る事は彼女のプライドが許さない。が、ワイズマンからは丁重に扱えと言われているし何より放たれる雰囲気に肌が粟立つ感覚は、彼が見た目通りの老人ではない事の何よりの証拠。そんな相手に考えなしに噛み付くほど彼女は愚かではなく、業腹ものではあったがここは穏便に済ませようと大人しく頭を下げた。

「今回は少々手違いがあっただけの事。別の目的に関しては間もなく達成できるので暫しお待ちを」

 そう言ってメデューサはベルゼバブ、オーガを伴ってその場を離れた。ミラアルクもその後に続こうとしたが、訃堂の横を通り過ぎる際彼女はその腕を掴まれ引き留められた。

「ッ!?」
「分かっているとは思うが……次こそ失敗は許されんぞ?」

 射殺す様な視線に晒され、ミラアルクの顔に汗が噴き出す。乾いた口を潤す様に唾を飲み、喉の奥を震わせながら小さく答えた。

「わ、分かってるん、だゼ」
「ならばよい。盟約は、違えるなよ」


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