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不可能男との約束
日常の変動
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二週間前に起きた三河消失からの三河争乱を経て、武蔵は何かがいきなり変わった……という事はなく、前とそこまでは変わらない日常に戻っていた。
空は洗濯物を干すのなら、丁度いいくらいの青さであったし、風も気持ちいい。
率直に言えば晴れ空の下。
そんな青空の下、違う国からしたら巨大と評される武蔵の一艦である左舷・二番艦である村山には、何時もの梅組集団が───横たわっていた。
女性陣は息絶え絶えで済んでいるが、男性陣はほとんど倒れていて動けていない。
そんな中の中央で、普通に平然としている人間がいる。
オリオトライ先生である。

「はーい。休憩はしてもいいけど、倒れたままでいるのは駄目よー。倒れても、次の戦いに生かせるような戦いをして倒れなくちゃ駄目よ」

「くっ……この暴力教師……! 人類の限界を図り間違えてると思うのは私だけなのかな!? ああ、シロ君! 大丈夫!? ほ、ほら! シロ君の好きなお金の音だよ!」

「ふ……大丈夫だハイディ。お金ある所に我あり……お金なき所に我無しの信条の私がお金の音があるのに倒れるとでも……思ったか?」

「さ、さっすがシロ君! すて───あ」

ハイディは手の中でジャラジャラとお金を持っていたのだが、忘れてはいけない。
ハイディも早朝訓練で疲れているのである。
女性陣にも手は抜いていないオリオトライだが、男性陣よりはマシな扱いではある。だが、それでも疲労は蓄積されているし、そもそもハイディ自身が戦闘能力などは低い方である。
故に自分が意識している以上に体は疲れており、誤って手からお金を落としてしまったのである。
普段なら絶対にしないようなミスだが、今回は仕方がない。
だが、そこをシロジロは許さなかった。
立ち上がりかけていたシロジロは一瞬で膝を曲げて、まるで獲物に飛びかかる様な姿勢になり、そして膝を発条にして跳ねた。
その光景を死にかけているクラスの戦闘者達はおお……! と驚いた顔で結構、賞賛していた。
まるで、水泳部が水に飛び込むような跳ね方。水泳とは違い、両手はまるで何か大切な物を乗せる様に、両手をくっ付けており、そしてシロジロがその両手に入れるのはお金しかない。
重力によって落ちていくお金。
それに向かってジャンプするシロジロ。
そして、最終的に手の中にお金が入った。
その瞬間、シロジロは人生最大の笑みを浮かべてから───地面に頭から突き刺さった。
微妙に斜めに落ちていたので、運悪く頭から落ちてしまい、そして数秒後に体は地面に落ちて行った。
そのアホみたいな光景を梅組メンバーは無表情で見ていたが、二秒後にふ〜、疲れた疲れたの台詞を吐いて、無視した。
ハイディが何とか顔を地面から引っこ抜こうとしているから大丈夫だろうと思ったのである。

「……やれやれだな」


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