一話
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続ければ戦線も押し上げられるだろう。」
常人が発すれば自信過剰と呆れられるだろうその言葉も、男の異様な雰囲気によって確かな根拠を感じさせるものとなっていた。
「明日から動き始める。酒と煙草を用意しろ。」
雰囲気に呑まれ固まっていた女王はその言葉で我に返り、慌てて指示を出す。
「何をしておる!早く客人を持て成すのだ!」
その言葉を受け、慌てて動き出す部下を見ながら女王が尋ねる。
「失礼だが、名前を聞いても良いだろうか?王国で貴殿の様な戦士の存在は心当たりがない」
王国のアダマンタイト冒険者や有力な傭兵団などの強者は大抵記憶しているが、この男の特徴と合致する者はいなかった。
「バルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフ」
「なっ…!」
ヴァイセルフ。その名を王国で名乗れる者は限られている。王家の関係者だけだ。そしてバルブロと言えば最も王座に近いと言われている第一王子である。いくら自身の強さに自信があると言えども、護衛も付き人も無しに他国まで来るとは奔放な男だ。
(元々、最高級の待遇を用意するつもりだったが、より丁重に接しなくては…)
相手は王国の第一王子として贅を尽くした生活が当たり前になっているだろう。その分、目も舌も肥えている。下手な対応をすれば、自身を軽んじられていると受け取られる可能性もある。そうなってしまったら何をされるか分からない。
「まさか第一王子直々の参戦とは…驚きましたな…しかし…申し訳ありませんバルブロ殿。竜王国は今非常に困窮しており、明日食べる物にすら困っている状況です。ですからその…」
「うむ。勿論、出来る限りの持て成しはさせて貰うが王国の生活と比べると些か劣った環境になってしまうだろう」
「構わねェさ。ここにはメシを喰いに来たわけじゃねぇ。」
取り敢えず不興を買う事にならずに済み一安心する女王と宰相。タイミング良く食事の準備が出来たと報告を受け、案内を始める。
取り扱いを間違えば国が滅ぼされかねない悪魔の様な男。だが逆に上手く協力を仰ぎ、力を借りる事が出来ればこの絶望的な戦況も良くなるかも知れない。微かな希望を持ちながら女王は就寝した。
翌朝、バルブロは最前線の激戦区に来ていた。
城壁の上に立ち、ビーストマンの軍勢を見下ろすバルブロを竜王国の兵士達は固唾を呑んで見守っていた。
誰一人手を出すな
そう指示を受けている為、兵士達に出来る事は見守る事だけだ。王国の要人である為、殺されそうになってしまったら助けに入るつもりではあるが。
城壁から先は数えるのが億劫になる程の敵に溢れている。そんな死地とも言える戦場に、バルブロはなんの気負いもなく飛び降りた。
人間は自分達からすれ
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