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黒い親友が白魔術を学び始めて俺を痛めつけようとしている
5.さらに別の日の放課後
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ているが、やめさせる。たとえ今日は死んだとしても、だ。今のお前は異常だ。昔のお前に戻したい」
「ふーん。なんで僕のほうを変えようとするの? そんなめんどくさいことしないで、そっちが逃げまくったり、目撃者がいるところにずっと紛れてたりすることは考えなかったの?」
「幼稚園の年長組のころ、お前のお母さんに言われたことがある」
「……なんて?」
「『仲良くしてくれてありがとう。この先もうちの子を助けてあげてね』って」

 ここで竹岡が真顔に戻った。

「へえ。そんなこと言ってたんだ。僕の母さん」
「あの約束に期限は決められていない。今も生きたままだと思っている」
「だから僕を元に戻したいってこと?」
「そうだ。それが約束を果たすことになる」
「うれしいね。やっぱりキミは僕のヒーローだ。大好き。でも、やめないよ。僕、罪を犯してることにはならないと思ってるし。せっかく、キミをどんなに散らかしても、ちゃんと後片付けができるようになったんだ。やめないよ」

 日高は首を振った。

「いや、お前がやったこと、やろうとしていることは罪になる」
「ならないでしょ? だって服もケガも完全に元どおりだし、命も元どおり。何もかも元どおりにできるんだよ。やってないところまで戻るんだからね」
「いや、元どおりにはできない」
「どういうこと」
「いくら白魔術で体の傷を元に戻せても、心の傷は戻したことにならないだろ」

 どうやら意外な指摘だったようだ。
 形のよい顎を、竹岡が手で触った。

「心の傷は戻らない、か……」
「ああ。自分で言うのは嫌だが、少なくとも俺はそうだった。傷も痛みも残っていないが、ショックは残っている。消えていない」
「そっか。なるほど。それは考えたことなかったな。ごめんね」
「傷つける対象が俺だけのうちはまだいい。だがいずれ飽き足らなくなったり、そうでなくても何かでカッとしたりして、他の人間に手を出すようになってしまうかもしれない。そうなったら取り返しがつかなくなる。まだ被害者が俺一人だけのうちに引き返そう。つらい経験もしてきたお前なら、一度気づきさえすれば、人間の心を誰よりも理解できるはずだ。もう変な目的での白魔術の勉強はやめて、人に危害を加えることも二度としないでくれ」

 しばしの間、二人の視線は交錯していた。
 うつむくことでそれを外したのは、竹岡のほうだった。

「わかったよ」
「……わかってくれたか」
「うん」
「ありがとう、竹岡」
「こちらこそ。キミがそんなに考えてくれてたとはね。ビックリだ」

 出刃包丁を箱にしまい、脇に抱える竹岡。
 日高の目に灯り始めていた希望の光が、一段と強さを増した、そのときだった。

「心の傷も元どおりにできるように、もっと白魔術を勉強するよ
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