暁 〜小説投稿サイト〜
星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
激闘編
第八十七話 国境会戦(中)
[7/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
イロットがもたらした通信文をヤンから見せてもらった。

『お疲れ様です。ミューゼル艦隊は我々の動きを気にして後退すると思います。ミューゼル艦隊が後退を始めたら、ヤンさんも後退してください。あと機雷の始末も宜しくお願いします』

…これだけだ。
「本当にミューゼル艦隊が後退すると?」
「ウィンチェスター提督はどうやらミューゼル艦隊は独断で戦闘を開始したのではないか、と推測しているんだと思う」
「独断で?…何故ウィンチェスター提督はそうお考えなのでしょう?」
「メルカッツ艦隊は動いていないからね。常識的に考えればミューゼル艦隊だけではなくメルカッツ艦隊も攻撃参加するか、合流はする筈だ。一個艦隊より二個艦隊で一緒に動いた方が有利だろう?」
「それはそうですが…」
「一緒に行動していないという事は、やはりメルカッツ艦隊は別の任務を与えられているか、元々二つの艦隊の任務はこの宙域の警戒と監視だったんじゃないかな。だが我々が居た為にミューゼル艦隊は戦闘を開始した…」
「そうか…我々は少数ですし、ミューゼル中将はこの艦隊に敗れていますからね」
「うん。そして我々に第九艦隊からの増援が成される訳だが、その兵力は二千五百…ミューゼル中将は考えるだろう、何故増援は少数なのかと。第九艦隊には別の目的があるのでは、とね。そして彼から見える第九艦隊の動きがそれを肯定する…迷うだろうね、ミューゼル中将は」
どうなっているんだヤンの頭の中は。ヤンもそうだがウィンチェスター提督も、どういう思考回路をしているんだ?
「しかしだ…ウィンチェスター提督も意地が悪い」
「何故です?」
「ラップ参謀長、君が敵の…ミューゼル艦隊の参謀長だとする。敵十三艦隊が二千五百隻の増援を得た、どう考える?」
どう考えるって……成程、確かに意地が悪い。
「敵は増援を得たが味方よりは劣勢、戦闘続行には支障がない……面子も自尊心もくすぐりますな、こいつは」
「だろう?相手にまだ味方が有利だと思わせるギリギリの線で兵力を派出しているんだ。提督が味方でよかったよ」

 「帝国軍、僅かずつではありますが後退しつつあります!」
オペレータの報告に反応するかの様に、ヤンは紅茶入りブランデーを一気に飲み干した。
「グリーンヒル中尉、もう一杯貰えるかな……参謀長、此方も後退の準備だ。機雷の始末をしようか」
「機雷、ですか?始末といわれても戦闘中です、回収は困難ですが」
「全部爆発させてしまおうか」
「ば…爆発させるのですか?」
…我ながら間抜けなオウム返しだ。ヤンの言葉を聞いてムライ中佐やパトリチェフ少佐も呆気に取られた顔をしている。
「処理はしなくてはならない、でも戦闘中で回収は困難…爆発させるしかないだろうね。ミューゼル艦隊もさぞ驚くだろう」
ヤンはほぼブランデーの紅茶を
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ