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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
激闘編
第八十七話 国境会戦(中)
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「そうだな…敵の増援本隊の指揮官は、眼前の敵十三艦隊の司令官を信頼しているのだろう。ヤン・ウェンリーと言ったな、確か」
「かのウィンチェスターの参謀長だった男の様だ。『エル・ファシルの英雄』でもある」
「ふむ…されば、あの増援本隊の指揮官はウィンチェスターではないのか」
「何故そう思うのです?」
「増援の戦力だ。ヤン・ウェンリーなら二千五百隻で事足りる、と判断したからこそ少数の戦力しか送らなかった。互いの能力をよく知る者のみにしか出来ぬ判断だ」
なるほど、確かに常識的に考えれば艦隊全てか、此方と同数になる様に戦力を派出するだろう。それを少数しか派出しないとなれば、それで充分、と考えている事になる。信頼と、互いの能力をよく知る者同士でなければ出来ない判断だ。
「それに、一つわかった事がある」
「何でしょう?」
「敵にとって、やはりヤン・ウェンリーは信頼に足る指揮官、という事だ。半個艦隊ながら、二千五百隻の増援で一個艦隊を相手に出来るというのだからな」
そう言うとビッテンフェルト大佐は腕を組んで再びスクリーンを注視しだした。一見すると粗野な人物の様に見えるが、、どうやら人は外見では判断出来ない一例の様だ。

「通信傍受の結果、後方の敵の大規模集団は叛乱軍第九艦隊の模様。徐々に離れていきます」
オペレータの報告にビッテンフェルト大佐は肩をすくめながら苦笑した。
「嫌な方に予想が当たるな。これは苦戦間違いなしだぞ、ミュラー大佐。ミューゼル閣下はどうするおつもりだろうな」



宇宙暦795年9月30日16:00
フォルゲン星系第七軌道、自由惑星同盟、自由惑星同盟軍、第十三艦隊旗艦ヒューベリオン、
ヤン・ウェンリー

 “お待たせしました。我々だけですが、少しは楽になるかと”

「助かるよ、ダグラス准将。やはり我々だけではキツくてね。ところで、貴官のところの本隊は饒回進撃を狙っているのかな?」

“いえ、あくまでもそちらの後退の援護行動の様です。ところで我々は何をすれば?”

「我々の後退の援護か…成程。准将、済まないが右翼についてくれ。敵の左翼を押し返してくれるとありがたい。フィッシャー提督を我々の後方に下げたいんだ」

“了解しました”

「どうやら敵の左翼の指揮官は、ミッターマイヤー少将という人物の様だ。貴官は知っているかい?」

“ヤマト…じゃなかった、ウィンチェスター閣下から聞き及んでいますよ。何でも疾風だとか”

「らしいね。大丈夫かい?」

“小官なら疾風怒濤か疾風迅雷といきたいところです”

「はは、任せたよ」

 ダグラス准将が屈託のない笑顔を見せると同時に映像通信は切れた。二千五百隻、少ないが充分に有難い援軍だ。
「ダグラス分艦隊、前進する模様!…よろしいのです
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