激闘編
第八十七話 国境会戦(中)
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無理はしないという事か、それは理解出来る、しかし小勢ながら敵はしぶとく戦っている。増援はすぐそこまで来ているという事だろう。一体どれくらいの規模の兵力なのか…。
「ロイエンタール分艦隊より入電。敵十三艦隊に近付く艦影を発見、約二千五百隻」
オペレータの報告に動じる事もなく、ミューゼル閣下はじっとスクリーンを見つめている。
「増援か。それにしても数が少ないな」
そう、数が少なすぎる。敵の第十三艦隊は善戦しているものの、二千五百隻程度では此方の優位は動かない。叛乱軍の目的は何だ…。
「こ、これは…失礼しました、更に後方に艦影多数、一万隻を越えます。先程の二千五百隻の集団とは別行動を取っている模様」
オペレータのこの報告にはミューゼル閣下も僅かに表情を硬くしていた。概略図には第七軌道を周回する小惑星帯に布陣している敵十三艦隊、それに近付く二千五百隻程の敵小集団、その更に後方には小惑星帯に沿って戦場を迂回して進む一万隻規模の集団が映し出されている。
「奴等、味方を放っておくのか」
思わずビッテンフェルト大佐が声をあげた。
「キルヒアイス参謀長、現在の彼我の兵力は」
「はい。敵十三艦隊は現在約五千隻程です、あの小集団が合流すれば七千五百隻から八千隻かと思われます。対する我が艦隊は…一万隻弱です」
一万隻対八千…微妙な数字だ、しかも現状では互角…おそらく序盤のミッターマイヤー、ロイエンタール両分艦隊の損害が大きいのだろう。本隊の動きを隠す為とはいえ少なくない数の犠牲が出ている筈だ。
「地の利があるとはいえ、敵十三艦隊がこれ程しぶとく戦うとはな。ヤン・ウェンリーという男も中々やるではないか…」
ミューゼル閣下の言う通り、敵はしぶとい。あのしぶとさに更に二千五百隻が加われば敵は勇気づけられるだろう。小惑星帯は戦力の集結が行いづらい。敵はそれを考えて少ない増援を送ったのではないだろうか。とすると増援の派出元と思われる、後方の一万隻規模の敵艦隊の意図する所は…。
「閣下、あの後方の艦隊ですが、饒回進撃を狙っているのではないでしょうか」
「饒回進撃?敵は我々の後方に回ろうとしているというのか、キルヒアイス参謀長」
「小惑星帯は大兵力の運用は困難です。敵十三艦隊がそこに籠っている以上、多数の増援を送るよりは一挙に我々の後方を遮断した方が危機を救う事が出来る…と判断したのかもしれません。若しくは…」
「…メルカッツ艦隊の後方に出ようとしている、そういう事だな」
すかさずミューゼル閣下の指示によりオペレータが警告の通信を発した。メルカッツ艦隊の後方…確かに可能かもしれない。しかし我々が警告すれば、メルカッツ艦隊とて充分に対処可能だ。だが…少数の味方が苦戦しているのにそんな悠長な策を採るだろうか。
「どう思う?ビッテンフェルト大佐」
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