第三部 1979年
迷走する西ドイツ
忌まわしき老チェーカー その5
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世界初のターボチャージャーを搭載した市販車であった。
だが、今日のようには電子制御もされていない機械式インジェクションシステムであった。
そのうえ、インタークーラーも付いていなかったため、省燃費エンジンとは程遠かった。
第一次オイルショックの影響もあって、わずか1672台で生産が終了となった幻の車である。
以前、マサキが西ドイツを訪問した際に中古販売店で買って、キルケに預けておいた車であった。
それをマサキが現代の自動車と同じように、電子制御の緻密化、直噴エンジンや多段ATなどに組み替えた。
ハイパワーによって、レーシングカー並みに改造を施したものである。
十数時間に及ぶドイツ滞在は、マサキを疲労困憊させるに十分であった。
後部座席にいる彼は、シートベルトを締めると同時に転寝をしてしまうほどだった。
「尾行てくる車はいないみたいよ」
「いずれ追ってくるだろう。
彼等も必死だ。
我々を殺せば、ゼオライマーの秘密が手に入るのだから……」
鎧衣とキルケの会話で目が覚めたマサキは、コーラの瓶を呷った。
そして、懐より煙草を取り出す。
カーラジオがかかっていたのに目が覚めなかったのは、熟睡した為であろう。
米軍放送の内容からすれば、深夜12時ぐらいか……
「これで、BND、国境警備隊、みんな敵にまわしちゃったわね」
それまで黙っていたマサキは、脇から口をはさんだ。
「四面楚歌だが、まだ手はある」
言葉を切ると、タバコに火をつける。
「ミュンヘンの日本総領事館に、助けを求めるの?」
「いや、ゼオライマーだ。
美久に来てもらう」
「でも、自動車電話も傍受されている、こんなところから連絡を取る何って」
「仮に美久が駄目でも、対策はしてある。
こっちは深夜12時だが、向こうは朝の6時だ。
そろそろ彩峰や白銀が役所に出向くころさ」
そういって、キルケの顔を覗いたとき、彼女は少し汗ばんでいた。
キルケは内心の狼狽を知られた気がして、額の汗をハンカチで拭い去る。
「これで行ける所まで行こう。
夜のとばりにまぎれて、逃避行も悪くはあるまい。フハハハハ」
マサキは、不安な顔をする二人をよそに、不敵の笑みを浮かべて、平然と言った。
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