第三部 1979年
迷走する西ドイツ
忌まわしき老チェーカー その4
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、ソ連の天然ガス資源のパイプライン延長を模索していた。
中近東の絶え間ない混乱によるは、石油や天然ガスの供給そのものを不安視させていたのだ。
1970年に独ソ間で結ばれた「天然ガス・ガスパイプライン交換協定」
これにより、西独の企業は、ソ連に対し、高品質の大口径鋼管を供給することを決定した。
当時、西ドイツと日本だけがこうした大口径鋼管を生産可能なためであった。
米国の横やりもあったが、ソ連からの天然ガスの割合は20年で35倍に増えた。
1980年代当時で言えば、ドイツでは30パーセントに達した。
このように、ソ連は、欧州を自国のガスに依存させた。
だが、それと同時に、急速な経済成長をもたらした。
「保険ですか……」
「だが、木原が生きている限り、いつ奴がまたソ連へと牙をむかないとも限らん。
調略するよりは、いっそ……」
それまで、すべての発言を黙って聞いていた首相が口を開いた。
キンケル長官とレーバー副議長の言を遮るようにして、
「木原の事は頼らんでも、わが国にはすでに秘密裏にパーシング2が配備してある。
奴らは核ミサイルをモスクワに飛ばされるくらいなら、中近東の半値で石油を売ろう。
何の心配もいらん」
男は、強いいらだちを隠すようにして、吸っていた紙巻煙草を灰皿に押し付ける。
休む間もなく、新しいゲルベゾルテの箱の封を開けた。
「ゲンシャー君、キンケル君。
木原の事は逐一、私の元に報告を上げたまえ」
男は言葉を切ると、取り出した煙草に火をつけた。
「はい、総理」
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