暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
XV編
第204話:歌を守る戦い
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「残念ですけど颯人さん、《皆》はそうは思っていないみたいですよ」
「え?」

 透の言葉に颯人が思わず聞き返すと、次の瞬間曲がり角から響、クリス、調、切歌の4人が姿を現した。本来であればまだ観客席で奏達のライブを楽しんでいる筈の4人がこの場に居る事に、颯人は珍しく狼狽えた様子を見せる。

「えっ? はっ!? ちょ、何で皆ここに……!」

 驚く颯人に対して、真っ先に距離を詰めたクリスが彼の胸板を拳で突いた。ちょっと強めに力を込めて突いたので、衝撃で颯人は一瞬息を詰まらせる。

「ヴッ……!?」
「ったく、水臭えんだよペテン師が。お前や透達だけにそんな事任せてのほほんとしてる程、アタシらは薄情な性格してねえ」
「い、いやでもさ?……あれ? もしかして奏達も?」

 彼女らがここに居ると言う事は、奏も異変に気付いている可能性がある。もしや彼女達もライブを中断してこちらに来ているのではないかと危惧した颯人であったが、それは響の口から否定された。

「いえ、奏さん達には何も言ってません。私達が居なくなっちゃったから、もしかしたら何かに気付くかもしれないですけど……」
「でも、多分分かってくれてると思います」

 響に続いて調がそう告げたのにはちゃんと理由がある。颯人が他の男2人を連れて席を立った直後、ステージの上から奏と翼が彼女達に頷きながらウィンクを送ってくれたのだ。

 言葉無き言葉。だが彼女達にはそれで十分だった。奏達はこう言っているのだ。颯人達と一緒に行ってやってくれ、と。自分達は自分達のやるべき事をやる、だからそちらは任せたと信頼してくれているのだ。

 奏達に気を遣うつもりが、逆にこちらが気を遣われた事に颯人は一本取られたと言う様に天井を仰ぎ見ながら帽子で目元を隠した。だが、その口元には隠し切れない笑みが浮かんでいた。

「全く、これだからなぁ……」

 これだから奏の事を愛さずにはいられない。こちらの意図を汲みながら、それでも尚こちらへの気遣いを忘れない。姉御肌だが通すべき筋を通し、誰もを温かく包み込んでくれる抱擁力を見せてくれる。そんな彼女だからこそ、颯人は彼女を愛しているのだ。

 そんな信頼を向けられているのなら、それに応えないのでは漢が廃る。

「うし、行くか!」
「はいッ!」
「おっしゃ!」
「何時でも」
「頑張るデース!」
「うん!」
「気張り過ぎないようにな」

 士気は高く、気合十分。そんな仲間達を見ながら、颯人はこっからは見えないステージ上の奏へと想いを馳せる。

――邪魔はさせねえから、思う存分歌いな!――

 そうして颯人達は、逆探知して判明したジェネシスと錬金術師が潜んでいる現場へと向かったのだった。




***




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