クラーク中尉の仕事録 〜部下の笑顔を守りたい〜
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おたく、中尉の仕事がどんなものか知ってるかい?
中尉ってのは、ただ前線に出て小隊の隊長を務めりゃいいってもんじゃない。
本部基地にいる間は大量の書類業務をこなさなければならんし、大いに世話の焼ける大佐の秘書も務めなければならない。
そして上官の無茶振りを阻止し、部下が仕事しやすい環境を守ることもまた俺の仕事だ。
さらに、レオナとウィップを含む総勢五十名の部下の面倒も見なければならない。
その内容は職務上の指導だけに留まらない。場合によっては、彼らの生活面や精神面のサポートまでしてやらなければならないのだ。
たとえば、恋人ができないと悩んでいる部下には恋愛指南をしてやる。
一向に貯金ができないと嘆く部下がいれば、計画的な金の使い方や投資術についてわかりやすく教えてやる。
アルコール中毒になりかけている部下や、薬物に手を出したことが発覚した部下は、即リハビリセンターに送ってやらなければならない。
さらに「女房と離婚寸前なんです!」と涙目で訴えてくる部下がいようものなら、まとまった休暇を取らせて妻子と過ごす時間を与えてやるよりほかない。
まったく、俺のほうが彼女と過ごす時間が欲しいくらいだと言うのに、だ。
肝心の彼女がいないのが悲しいところだが……。
おっと、つまらん愚痴を聞かせてしまってすまなかったな。
今、ちょうど大佐が山のような書類を抱えてウィップのところにやって来た。何やら一波乱ありそうな気配が漂ってきたぞ……。
「ほーらムチ子、仕事を持ってきてやったぞ。今週中に終わらせろよ」
ラルフは楽しげに言い、大量の書類をウィップのデスクにどさりと置いた。
その高さたるや、軽く二フィートはあるだろうか。まさに書類のエベレストだ。
ぎょっとした顔で書類を見上げたウィップがラルフを睨み、
「こんなの、今週中に終わるわけないじゃないですか! まだ報告書もできていないっていうのに」
「口答えするな! これは上官命令だ。期限までに入力が終わらなかったら、罰として追加の業務を与えるからな。覚悟しとけよ」
「そんなぁ……」
ウィップはがくりと肩を落とし、深い溜め息をついた。
最近、彼女はしつこくムチ子呼ばわりしてくるラルフに腹を立て、上官によるハラスメント行為としてハイデルンに報告をした。
当然、ラルフはハイデルンに呼ばれて厳重注意を受けたのだが、それを根に持ってウィップに罰ゲームのような仕事を押し付けたようだ。
そもそもウィップをムチ子呼ばわりしなければ、ハラスメント行為として報告されることもなかったというのに、逆恨みして子どもじみた仕返しをするとは……まったくどうしようもない上官である。
絶望に満ちた眼差しで書類の山を眺めているウィップを見かねて、
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