気遣いの中間管理職・クラーク中尉
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時間か」
ラルフはデスクから足を下ろし、人目を憚らず大あくびをした。どう見ても緊張感ゼロである。
作戦中と変わらない緊張感を持てとまでは言わないが、せめて格闘訓練の時のようにしゃきっとしていてもらいたいものだ。
仮にも大佐という地位にある者なのだから。
……などという小言は心の中に留め、クラークは次の連絡事項をラルフに伝える。
「それと、先ほど上がってきた十名分の報告書をチェックして、問題の無かったものをメールで大佐宛てに送りました。今日中に電子署名を付与して、教官宛てに送信しておいてください」
「おお、気が利くな。ありがとよ。講義が終わったらやっとくぜ」
ラルフはこれでもかと白い歯を見せ、上機嫌そうな笑みを浮かべた。
文字がびっしりと並んでいる報告書を読む必要がなくなり、喜んでいるのだろう。
まったく、寝ている暇があったら報告書のチェックくらいしてほしいものだ。
こっちは忙しいんだから。主に大佐のせいで。
……という本音は口に出さず、クラークは静かに笑みを浮かべた。
「じゃ、そろそろ行くとすっか」
目の前の部下に呆れられていることに気づく様子もなく、ラルフは椅子から立ち上がり、クラークの肩を気安く叩いた。
二時間に及ぶ最新戦術・戦略講義が終わり、クラークはラルフとともに執務室に戻った。
ラルフは大佐席のデスクから煙草を取り出し、早々に執務室を出ていった。
席に戻ったクラークは講義の資料をデスクに広げ、眉根を寄せてうーんと唸る。
ハイデルンから直々にレクチャーを受けたのだが、いまいち理解できなかった内容があるのだ。
「どうしたんですか、中尉。めずらしくそんな顔をされて」
ふいにウィップの声が聞こえてきた。
資料から目を離したクラークは、険しくなっているであろう表情を和らげ、レオナと並んで立っているウィップを見上げる。
「ああ……最新の戦術と戦略についての講義を受けたんだが、今回はなかなか高度な内容でね。理解しきれなかった部分があるんだ」
「えっ、意外ですね。大佐ならともかく、博識な中尉でも理解できないことがあるだなんて」
ウィップがしれっとラルフを侮辱したのを耳にして、クラークは眉を顰める。
「こら、ウィップ。さりげなく大佐のことをけなすんじゃない」
「だって、大佐はいつも馬鹿話ばっかりしていて、ちっとも頭が良さそうに見えないじゃないですか」
ウィップが不満を露わに反論してきた。
クラークはちっちっと指を振り、ウィップを諭す。
「お前は何もわかっちゃいない。彼は陸軍士官学校を首席で卒業して、二十代で特殊部隊の大佐に特進した、エリート中のエリートだったんだぞ」
「えっ、そうなんですか」
ウィップは目
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