最後の上官命令
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ねた。
「忘れるわけねえだろ。目の前であんな真似をされたらな……。二度と自分から命を絶とうだなんて考えるんじゃねえぞ」
「はい。もう自ら捨てるつもりはありません。命も、未来も」
ラルフの瞳をまっすぐに見据えながら、レオナはきっぱりと答えた。
力強く頷いたラルフがレオナの頭を優しく撫でる。
彼の大きな手が髪を滑っていった瞬間、レオナは幼い頃によく頭を撫でてくれた父の姿を心に描いた。
「あの時、大佐が私を止めてくれなかったら……私は今頃、この世に存在していなかったでしょう。本当に感謝しています。ありがとうございました」
「上官として当然のことをしたまでだ。礼には及ばねえよ」
そう言って、ラルフは少し照れくさそうにへへっと笑った。
話を終えてラウンジをあとにした二人は、指揮官専用の居住区画へと続くドアの前で足を止めた。
「大佐……来月からの格闘訓練の時間を楽しみにしています。それでは、おやすみなさい」
レオナはラルフに向かって敬礼し、その場から立ち去ろうとした。
「待て、レオナ」
ラルフに呼び止められ、レオナは静かに振り返る。
「……何でしょうか?」
「これから最後の上官命令を下す。一度しか言わねえからよく聞けよ」
はい、と答えたレオナは神経を集中させ、じっと耳を澄ませる。
ラルフは無言の溜めを置き、すっと息を吸い込んでから口を開いた。
「もっと笑顔を見せろ。それと、ちったあ女らしくなるんだぞ。以上」
最後の上官命令を聞いて拍子抜けしたレオナは、思わず唇を綻ばせた。
そして満面の笑みを浮かべているラルフを見上げ、「了解」と敬礼をした。
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