無口なレオナとコミュ強大佐
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ていたレオナが振り向き、私と大佐を見上げた。
その瞬間、固く結ばれていた唇がわずかに綻んだような気がした。
「ほら、今の表情。俺たちが戻ってきてほっとしてるんだよ」
大佐が小声でそっと耳打ちしてきた。
なるほどと思いつつ、私は椅子を引いて腰を下ろす。
同じく椅子に座った大佐は、飲みかけのカップを傾けてから話し始めた。
「そうそう、先週、クラークと一緒にメキシコに行ってきたんだよ」
メキシコに? 一体、何をしに行ったのだろう?
そんな疑問を抱いたが、あえて私からは質問しなかった。レオナの反応を観察するために。
「メキシコに……? 何をしに行ったんですか?」
レオナは抑揚のない声で尋ねた。どうやら私と同じ疑問を抱いていたようだ。
「クラークがキング・オブ・ダイナソーの試合を観に行くっつったからよ、面白そうだから俺も一緒に行ったんだ。いやー、あの試合は無茶苦茶盛り上がってたなあ。普段はクールを決め込んでるクラークも、あん時ばかりはエキサイティングしてたもんなあ」
「えっ、中尉が?」
私とレオナは同時に驚きの声を上げた。
正直なところ、私はプロレスにはさほど興味が無い。だから、唯一食いつけるところが『クールな中尉がプロレス観戦でエキサイティングしていた』という点だった。
そしてそれは、レオナも同じだったようだ。
「ああ。派手な身振り手振りを交えて『いけーっ!』『スーパーゼツメツハリケーンだー!』とか叫んでたぜ。おまけにFワードを使った野次まで飛ばしやがってよぉ、隣りで聞いてるこっちが焦ったぜ」
「中尉が下品な野次を飛ばすだなんて……想像できないわ」
「でも、ちょっと見てみたかったかも」
レオナは控えめな声で言い、ふふっと愛らしく笑った。
ちょっと! 今の表情、ものすごーくレアじゃない? しかも結構可愛いし。
それにしても、レオナを笑わせることができる大佐はかなりのコミュ強かもしれない。
「だったら、クラークと一緒にプロレス観戦してみな。別人みてえなあいつが見れるぞ」
大佐はさも面白そうにくっくっと笑い、それから私とレオナを交互に見た。
「お前らは先週のオフにどこ行ってきたんだ?」
「私は隣町にできた蜂蜜スイーツカフェに行ってきました」
ひとまず私が先に答えると、大佐は私を指差しながらにやりと笑い、
「好きだねえ。どんなスイーツを食ってきたんだ?」
「蜂蜜レモンのチーズタルトと、ハニーミルクティーです。甘くて美味しかったですよ」
「そりゃよかったな。蜂蜜の食いすぎで夢の国のクマみてえな体型にならねえよう、気をつけろよ」
「余計なお世話ですっ!」
私は大佐を鋭く睨みつけ、口元まで運びかけていたカップをテーブルに叩き
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