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【KOF】怒チーム短編集
突然の再会
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ない状況だったのは今と変わらない。
 そのせいで幼い娘に寂しい思いをさせてしまったことを、今日に至るまでずっと後悔し続けてきた。

「……あの頃は寂しい思いをさせてすまなかった」
「仕方ないよ。特殊部隊にいたんだから。厳しい訓練や命懸けの任務で長期間拘束されるんでしょ? 大変な仕事だったよね」

 娘は過去のラルフの事情を汲むように言い、微笑した。
 幼い頃は戦地へ赴こうとする父の脚にしがみつき、泣きながら引き止めていたというのに、ずいぶんと物分かりが良くなったものだ。
 ラルフは成長した娘の気遣いをありがたく思う一方で、いっそのこと父親失格だと詰られたほうが気が楽になったかもしれないとも思った。

 複雑な感情を抱えたまま、娘をダイニングに案内する。
 それからキッチンに立ち、引き出しからマグカップとスプーンを取り出してインスタントコーヒーを二杯淹れた。
 ラルフは湯気の立っているマグカップを娘の前に置き、

「まだメシ食ってねえんだろ? ピザでも注文すっか? それとも外に食いに行くか?」
「どっちでもいいけど……父さん、もしかしてずっとそんな食生活をしてたの?」

 娘が心配そうに尋ねてきた。
 ラルフは首を横に振り、

「まさか。たまの休暇の時だけだ。仕事柄、不摂生なんかして太るわけにはいかねえからな」

 と言って椅子に腰を下ろした。

「ふーん、そうなんだ。今は何の仕事をしてるの?」
「傭兵をやっている」
「傭兵!? どこかの国の傭兵部隊にいるの? それとも、民間軍事会社に雇われてるの?」

 娘が興味津々といった様子で尋ねてきた。
 ハイデルン傭兵部隊は特定の国の傘下に置かれているわけではない。
 しかし、一般的な民間軍事会社とも微妙に立ち位置が異なる。何とも説明しがたい傭兵組織なのだ。
 ラルフは腕を組んでうーんと唸り、「ま、民間軍事会社に近いな」と答えた。

「そっか。何ていう会社にいるの?」
「おっと、そいつは言えねえな。無事に傭兵を引退できる日がやって来たら教えてやるよ」

 娘は「えーっ」と不満そうな声を上げ、口を尖らせた。ラルフの記憶に残っている幼い娘と何ひとつ変わらない仕草だ。
 まだかろうじて幸せな家庭を維持していた頃の思い出が蘇り、ラルフは淡い寂寥を覚えながら微笑んだ。

「それより、今夜のメシはどうするんだ? 何でも好きなもんを食わせてやるぞ」
「うーん……ピザにしよっかな。外よりここのほうが気兼ねなく話せるでしょ? 父さんは仕事柄、外じゃ話せないこともたくさんあると思うからさ」
「そうだな。じゃ、早速ピザを注文しよう」

 ピザショップのチラシを持ってきたラルフは、どのメニューにするか娘と相談し、野菜のピザとバーベキューチキンピザ、フライド
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