第一章
[2]次話
椰子の魔法
サモアの話である。
シナという娘がいた、シナは見事な褐色の肌に見事な身体に切れ長の黒い星の様に瞬く目と流麗な形の眉と顎腰まである長い黒髪を持つ美女である。
その彼女を見てだ、フィジーに住む青年であり魔法にたけたトゥイフィティは仲間達に対して言った。
「俺は惚れた」
「シナにか」
「サモアのあの娘にか」
「そうなったか」
「ああ、俺は妻がおらず」
そしてというのだ。
「あの娘も一人だ」
「それならだな」
「丁度いいな」
「夫婦になって」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
「サモアで見てからフィジーに帰ってきたが」
「またか」
「サモアに行ってか」
「あの娘に告白してか」
「妻にするか」
「そうする」
長方形の顔で黒い肌だ、太く長い眉で明るい四角い感じの目で黒髪は短い。中背で逞しい身体で南洋の服が似合っている。
「これからな」
「そうか、それじゃあな」
「行って来い」
「サモアまでな」
「そうしてこい」
「そうしてくる」
こう言ってだ、彼はサモアに行くことにしたが。
たまたま船がなかった、それで彼は言った。
「ここは俺の得意な魔法を使ってだ」
「そしてか」
「そのうえでか」
「サモアまで行くか」
「そうする」
こう仲間達に告げた、そしてだった。
すぐに魚それも細長く素早く泳げる鰻に変身して海の中に入ってだった、サモアまで泳いでいった。そしてサモアに着いてだった。
シナが仕事の岸辺での貝採りに来るのを待った、程なくして彼女が来てそれで海の中から彼女に声をかけた。
「いいだろうか」
「人の声?」
「ここだ」
自ら言った。
「俺はここだ」
「鰻?」
「そうだ、今は鰻の姿だが」
海面から顔を出して話した。
「実は人だ、フィジーのトゥイフィティという」
「フィジーの人なの」
「お前を見て好きになってだ」
そうしてというのだ。
「魔法で鰻になってだ」
「フィジーまで泳いできたのね」
「このサモアまでな」
シナに正直に答えた。
「そうした」
「フィジーから遠いのに」
このサモアまでとだ、シナはこのことに驚いて述べた。
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