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老神と奥さんのお話
第二章
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「これからな」
「それでは今からお話しますね」
「宜しく頼む」
 ケナが頷くとでした。
 女王はケナにです、こう言いました。
「奥さんに服を着せます」
「まずはそうするのか」
「そして籠の中に入れまして」
 次はそうしてというのです。
「十日の間出さないのです」
「そうすればか」
「はい、奥さんは蘇り」
 そうしてというのです。
「そちらの世界に戻れます」
「そうなるのか」
「はい、ですが」
 それでもとです、女王は言うのでした。
「何があっても十日はです」
「籠から出してはいけないか」
「例えどれだけお会いしたくとも」
「十日はか」
「若し籠から出してしまいますと」
 その時はというのです。
「私達神であっても一年はです」
「待たないといけないか」
「そうです、ですから」
「十日はだな」
「我慢して下さい、一時我慢されれば」
 そうすればというのです。
「それで、です」
「ずっと一緒だな」
「ご夫婦で楽しく過ごせます」
「わかった、我慢しよう」
 十日の間とです、ケナは女王に答えました。そして奥さんを女王の言う通りに服を着せてそうしてからでした。
 籠に入れました、そのうえで十日経ってです。
 籠を開けますと無事に奥さんは蘇っていました、ケナはその奥さんと抱き合ってこれでまた一緒に暮らせると一緒に喜びました。
 ですがそのケナを見てです、女王は彼に尋ねました。
「十日の間よく我慢されましたね」
「これからまたずっと一緒と思うとな」
「ですがどうしてもです」
 女王は言うのでした。
「こうした時はです」
「開けてしまうか」
「はい」
 そうだというのです。
「どうしてもとなって」
「わしもそうしたかった、しかしな」
「それでもですか」
「十日の間籠から離れてな」
 そうしてというのです。
「美味いものを食って飲んで釣りや泳ぎをしたりしてな」
「過ごされていましたか」
「籠を開けたくなるなら離れてな」 
 そうしてというのです。
「何かをして時間を潰す」
「そうすればいいですか」
「そうしたことをするのも知恵だな」
 ケナは女王に笑って言いました。
「そうだな」
「はい、それは」 
 女王もそれはと答えます。
「お見事です」
「伊達にわしも歳を取っておらん」
「神として」
「こうしたことも思いつつ、姪に言われてここまで来てな」
 そうしてというのです。
「よかった、ではな」
「またご夫婦で、ですね」
「楽しく過ごそう」
 こう言ってでした。
 ケナは奥さんと一緒にハワイキから常世に戻りそれからはまた夫婦揃って幸せに過ごしました。ニュージーランドのマオリ族に伝わる古いお話です。


老神と奥さんのお話   完



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