第一章
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破った約束
市川康光は所謂肥満児だ、丸々と太っている。
その為クラスでも何処でもそのことを言われていて。
「今日も言われたよ」
「太ってるって言われたのね」
「デブだって」
家で母の澄子に言った、母は細面で黒髪をショートにした穏やかな顔立ちでしかもすらりと痩せている。
「言われたよ」
「毎日言われてわね」
「うん」
母に悲しそうな顔で頷いて答えた。
「そうなんだ」
「嫌よね」
「凄くね」
「そうよね、誰だってそんなこと言われたら嫌よ」
母は息子に優しく答えた。
「本当にね」
「僕いつもお父さんとお母さんに人の嫌がること言うなって言われてるし」
ここで息子はこう言った。
「人にはデブとかね」
「言わないのね」
「言わないよ」
こう言うのだった。
「絶対にね」
「自分が言われて嫌だったらね」
「人には言わないことだね」
「そうよ、いいわね」
「うん、言わないよ」
康光は母に約束した、彼は小学校中学校高校と太っていていつもそのことを言われ続けた。だが大学を卒業した時にだ。
大学に入学してからアルバイトでスポーツジムの清掃員をはじめるといつも楽しそうに汗をかいているジムの利用者やトレーナー達を見てだった。
自分も少しやってみようと思ってやってみると随分気持ちよくてだ。
毎日アルバイトの合間に汗を流す様になった、すると。
「お前痩せたな」
「うん、半年でね」
父の耕太郎中背で痩せていて小さい目に眼鏡をかけた黒いセットした髪の毛のサラリーマンの父に整った顔立ちで答えた。
「この通りだよ」
「ジムでアルバイトだけでなくか」
「身体も動かす様になったら」
父に笑顔で答えた。
「こうしてね」
「痩せたな」
「うん、そうなって」
笑顔のままさらに話した。
「身体の調子もいいし汗をかくことも楽しくなって」
「続けてるんだな」
「そうだよ、これからも」
是非にと言うのだった。
「健康的にね」
「ジムで汗かいていくんだな」
「昔の知り合いに会うといつも痩せたなと言われるのも嬉しいし」
このことも笑顔で言った。
「だからね」
「これからもか」
「ジムで汗かいてくよ」
こう言ってだった。
康光は毎日ジムで汗をかいた、掃除のアルバイトも続けながらで彼はどんどん痩せていって引き締まった身体になった。
両親はこのことをいいと思った、だが。
彼が変わったのは身体だけではなかった、テレビを観るとだ。
「こいつデブだな」
「えっ!?」
両親は息子の言葉に驚いた、テレビに出ていたそうした体形のタレントをこれ以上はないまでに蔑んで言ったのだ。
「お前何言ったんだ」
「今デブって」
「実際にこいつデブじ
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