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怒れる神
第一章

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               怒れる神
 タヒチの話である。
 世界には貝殻だけがあった、その中に真っ黒い肌を持つタナロアという神がいた。タナロアは貝殻の中に住んでいたが。
 その中だ、彼は貝殻に尋ねた。
「聞きたいことがある」
「何ですか」
「貝殻はいつも閉じられているな」
 このことを尋ねるのだった。
「そうだな」
「はい、そうですが」
「それで私は外の世界を知らないが」
「外ですか。何もないですよ」 
 貝殻は神に答えた。
「本当に何も」
「ないのか」
「はい、暗闇だけがあって」
 それでというのだ。
「他のものはです」
「ないのか」
「それで私はその中をです」
「暗闇の中をか」
「漂っているだけです」
「そうなのか」
「本当に他にはです」
 それこそというのだ。
「ありません」
「一体どんな状況だ」
 タナロアは話を聞いて興味を持った。
「外の世界は」
「興味を持たれましたか」
「そうなった」
 実際にというのだ。
「私もな」
「では開きますんで」
「それでか」
「外に出られて下さい」
「そうさせてもらう」
 タナロアは頷いてだった。
 そのうえで貝殻が開かれたのでその外に出た、すると。
 真っ暗闇だった、それで神は言った。
「本当に何もないな」
「この通りで」
「わし以外に誰もいないか」
「これが」
「何という面白くない世界だ」
 神は貝殻の言葉を聞いて怒った。
「こんなところに一刻もいたくないぞ」
「そう言われましても」
「いや、わしは怒った」 
 実際に怒った顔で言うのだった。
「だからな」
「それで、ですか」
「まずはお主に空になってもらう」
「私にですか」
「よいか」
「私もずっと暗い何もないところにいてです」
「嫌になったか」
 神は貝殻に問うた。
「そうなったか」
「そう感じていたところです」
「ならだ」
「それならですね」
「これよりな」
 まさにというのだ。
「そなたを空にする」
「わかりました」
 貝殻も頷いた、するとだった。
 タナロアは貝殻を高々と上げて天空にした、そして。
「そなたの少しの部分をな」
「どうしますか?」
「削ってな」
 そうしてというのだ。
「岩と砂を作ろう」
「そうしますか、今度は」
「うむ、そうする」
 こう言って実際にだった。
 今度は岩と砂を作った、だがそれでも彼は怒っていてだった。
「わし自身も使う」
「えっ、それはまた」
「いいのだ、何もない状況よりだ」
 神は貝殻がそうなった空に返した。
「ずっといい」
「だからですか」
「こうしてだ」
 自分の背骨を手で取り出してだった。
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