哀しみの味
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尤も、ホライゾンの中での親父さんは、実感はないが、事実ではあった。故に、だからこそ、現実が今になって押し寄せて来たって感じだろう。
だから、最初の一言は
どうして、感情というのはこんなに辛い物なんですか、か……
本当ならば、人間であったホライゾンはそんな思いを抱かなかった疑問だろう。
しかし、今のホライゾンは既存の自動人形とは違うとはいえ、今まではそれこそ他の自動人形とは指して違いはなかったのである。
しかし、今、さっきまで握っていた大罪武装・悲嘆の怠惰。
つまりは、悲しみの感情を彼女は知った。
いきなりだったはずだ。
今まで感情というのは知らなかった彼女はいきなり悲しみの感情を無理矢理という感じで刻み込まれた。
俺達にとっては当たり前の感情だったが、自動人形には感情はない。
しかも、最初に得たのが悲しみである。
なら、辛いと、痛いと思うのは間違いではないし、他の感情であっても大体似通った感想をホライゾンは得ていたかもしれない。
どう言うべきかと思う。
そして、例は直ぐに思いついた。
本当なら、自分の言葉で言うべきなんだろうけど、今回は親友の出番あっての勝利でもあったのに、折半で丁度いいくらいだろうと思い、内心で笑う。
そして口を動かす。
「なぁ、ホライゾン───とりあえず、今は泣け。だけど、最後には笑う為に、今と過去だけを見るんじゃねえ」
反応は直ぐに来た。
彼女は何時もの仏頂面を完璧に崩して、自分の方を睨んできた。
ホライゾンには悪いかもしれないが、俺はそんなホライゾンの悲しみが混じった表情を愛おしく感じてしまう。
惚れた男の弱みってこういうもんなのかなーと笑いながら、ホライゾンの悲嘆の叫びが耳に届く。
「どうして……!?」
「そりゃ、簡単だ。お前はこれから全てを取り戻した後は嬉しい事しか残っていないし、俺達は生きているんだ。じゃあ、生きている限り、未来に疾走しなきゃいけない」
自分で言ったセリフで脳裏に親友の姿を思い浮かべる。
今こそ、疾走して駆け抜けようという台詞を馬鹿みたいに実行しようとする馬鹿。
ちょっと悔しいが、俺が使うという事でチャラにしようと内心で理論武装しちゃう俺。
「馬鹿な友達がよく言うんだ───過去は振り返らない。ただ、忘れないだけ。故に前のめりに駆けんのが好きなんだよって。まぁ、ここまで割り切らなきゃいけねえってわけじゃないんだけどよ……でも、ホライゾン。過去と今だけに囚われんな」
でも、まだ大罪武装はたくさんある。
オメェに出来るだけ、悲しみは与えたくはねえけど、でも、それすらもやっぱ
「良い事なんだよ、ホライゾン。悲しめるっていうのは、それだけ大事だったっていう事なんだからよ」
俺はもう泣けねえから。
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