哀しみの味
[17/19]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
である。自分達が勝ってくれるであろうと思ってくれている武蔵の人達が。
そして隣でこんな時でも変わらない笑顔を見せている少年も。
全部消える。
全部失う。
そう思った瞬間、一つの記憶が瞳に映った。
それは昨日、墓にいた時に空を行く船の中から一人の中年に迫った男の人が自分に手を振っていたという事だった。
それは自分にとっての父であった。
自分には記憶がない。だから、実は今でもそれに関して、本当にそうなのかと思っている最中である。
決定的に実感というのが欠けているのである。
それでも、あの人は父だったのである。
そしてあの人はこう言っていたのである。
『今日、ホライゾンを見たよ……私に手を振ってくれた───手を、振ってくれたよ……』
その時に込められた感情がなんだったのか。
自分にはまだ理解できない。
だが、それ故に逆の膨大なナニカが、体の内で音を立てた。
「……あ……」
何という事だろうか。
自分は何時の間にか大切な人を失っていた。
その事実に、ホライゾンは今の状況を無視して、内から溢れそうになるナニカにただ、狂わされるかのように流されようとした時に、声が聞こえた。
「安心しろよホライゾン! 俺、葵・トーリはここにいるぜ! ───だから、何も考えずにお前が思った事をしろよ」
その一言。
その一言を聞いただけで、それを押し止めようとした理性は切れた。
自分はそれをしてもいいのだと許しのように感じたホライゾンはその安堵のような何かに、ホライゾンは総てを任せ
「あ……!」
まるで、産声のように泣いた。
それと同時にホライゾンの周りに大量の表示枠が生まれる。
『セイフティ解除"魂の起動":認識』
『━━━大罪武装統括OS:Phtonos-01s:初接続:初期化:認識』
『ようこそ感情の創生へ━━━Go the Middle of Nowhere』
そうしてそこから先は物語の大団円。
負けるかと思われていた掻き毟りの一撃は抉る様な一撃へと変化をし、流体砲を突き破り、栄光丸を貫いた。
そして勝利は一瞬だったなーとトーリは思った。
悲嘆の怠惰の掻き毟りの直撃を受けた栄光丸とやらの乗組員は避難をしているようだったから、大丈夫だろうと思う。
問題なのは自分の腕の中にある温もり。
ホライゾンである。
ホライゾンは悲嘆の怠惰を撃ち尽くした後に、直ぐに悲嘆の怠惰を投げ捨て、こちらに抱きついてきた。
最初は思われ、俺の益荒男が反応しかけて、うっほぉう! と叫びかけたが、一秒でそんな気が無くなった。
腕の中の少女は震えていた。
理由はさっき泣いたことから大体は予想できる。
親父さんの事でも思い出したのだろう。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ