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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第103話 憂国 その3
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む必要はないし、俺のことをバカにしたというよりもアッテンボロー氏の今までの経験から作られた俺に対する先入観が零れ落ちただけだろう。怒ったところで、気が晴れるような話でもない。

 だが言った方のアッテンボロー氏の顔は、半分恐縮と半分悔恨。表情を作っている感じがしないわけでもないが、状況は意図したものではないとは推測できる。俺はこれを理由に取材を断ることすらできるのだから、氏の立場からすると不利になったと言えるので、その悔恨ということだろう。ダスティ君の名前で口が滑ったというわけだ。

 出会う機会を作ってくれてありがとうと、俺はヤンに対して胸の内で感謝しつつ、空前の好機を前にさらに踏み込んでおきたいわけで。

「それにダスティ君には、ウチの妹の面倒を見てもらいましたよ。士官学校へ立ち寄った時と、キャゼルヌ先輩の結婚式の時でしたか。実に好青年ぶりで、気難しい妹も随分と懐いていたと思います」
「は? え? ちょっと、それは初耳なんですが……ちなみに妹さんはお幾つで?」
「イロナは今年で一四だったと思います」
「な゛……」

 自分が軍人である妻の父親と一〇〇度の口論と三回の殴り合いと特殊前借契約でようやく結婚できたというのに、自分の息子はいつの間にか高官(グレゴリー叔父)の娘とあっさり仲良くなっている。しかも兄公認で、八歳違いという。そんな誤解が氏の脳裏で渦巻き、勝手に苦悶しているのを傍目で見るのは実に悪魔的に楽しい。

「その、いや大変申し訳ないことを……」
「お世話になったのはこちらですから、パトリックさんが謝られるようなことではないですよ」
「はぁ……」

 世代もかなり違うし、赴任先でも重なっているところがないのに、アイツ何で知りあいなんだよクソッ、という文字が浮かんでいる氏の顔をティーカップ越しに眺める。まぁここ最近人間とは思えない人達と心温まる交流をしてきたので、そんな普通のオッサンの反応にほっとした気になってくる。

「さて、それで取材依頼書の件なのですが……三年前のマーロヴィアにおける治安回復作戦について伺いたいとか」
「ええ、そうです」
 ようやく本題に入ってくれるかと、安心して溜息をついて応じるアッテンボロー氏に、俺は敢えて首を傾げて言った。
「こう言っては何ですがパトリックさん。今更ド辺境の治安回復作戦を知りたい理由って何です?」
「正直言えば、方便です」
「方便?」
「最初は国防委員会理事のトリューニヒト氏について『いろいろと興味が湧き』、関係者周りを取材していたのですが、まぁガードが固いこと固いこと。で、調べられる範囲で公文書を初めとしたトリューニヒト氏の関連する事業や関与した話を虱潰しに当たったんです」

 それまでもその端正で計算しつくされた所作や、聞く者の心を高ぶらせる滑らかで
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