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八条学園騒動記
第七百五十二話 苗字がない家その八

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「チートとかね」
「言わなくなるの」
「そうなるわ」
「真の姿を見れば」
「宮中に出入り出来て」 
 当時の日本の宮廷は軍人で言うと将官クラスでないと出入り出来なかった、陸軍軍医総監は中将待遇でそれが可能であったのだ。森鴎外は軍医としての頂点に立っていたのだ。
「明治帝にもね」
「お会い出来たの」
「そうだったけれど」
 このことは事実だがというのだ。
「明治帝に嫌われていたみたいだし」
「そうだったの」
「晩餐会にもお呼ばれしたことなかったそうよ」
「そうだったのね」
「まあ今だとね」
 ジョーはエイミーにこの時代の話をした。
「各国の国家元首が来たら」
「晩餐会開いてるわね」
「昔は年二回位しか開けなかったそうだったけれど」 
 日本の宮中晩餐会はだ。
「今は何度でも開けるわね」
「そうよね」
「それで当時の晩餐にね」
「鴎外さん呼ばれたことなかったの」
「陸軍軍医総監で」
 この要職にあってとうのだ。
「翻訳者、小説家としても知られていたけれど」
「お呼ばれしなかったのね」
「一度もね」
「それって」
 エイミーもここまで聞いてわかった顔になって言った。
「やっぱり」
「そう、鴎外さんはね」
「明治帝に嫌われていたのね」
「実際人望はね」
 森鴎外はというのだ。
「なかったみたい」
「そうだったのね」
「確かに小説家、翻訳家として高名で」
 当時からである。
「軍医としてもね」
「有名だったのね」
「権威だったけれど」
 そうであったことは事実だがというのだ。
「そうしたことを見たら」
「目をキラキラさせてチートとか言ってる」
「それもキャーキャーね」
「そんな人の目を覚まさせられるのね」
「私何かね」
 ジョーは眉を顰めさせて語った。
「森鴎外さんをそう言う人見たら」
「チートだって」
「それも目をキラキラさせて」 
 そうまでしてというのだ。
「言う人見たらね」
「嫌に思うのね」
「その真の姿知れってね」
 森鴎外のというのだ。
「心から思うから」
「それでそう言うのね」
「そうよ、他の作家さんは兎も角ね」
「森鴎外さんについては」
「結核のことと爵位にこだわったことと」
 死ぬ間際にも紋付羽織袴姿で男爵位が授けられることを伝える使者が来るのを待っていたという逸話がある。
「舞姫のこと聞くと」
「あれ鴎外さんのお話なの」
 ベスが言ってきた。
「そうだったの」
「そうらしいわ」
「そうだったのね」
「最低でしょ」
「かなりね」 
 ベスは真顔で答えた。
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