第二章
[8]前話
それで今も自信がないが。
上司の課長江田香苗面長の形のいい顎を持つ顔に大きなはっきりとした二重の目に形のいい眉と黒いセットした長い髪に長身ですらりとしたスタイルの彼女に商品のデザインの仕事を頼まれてだ。それが終わった時にこう言われた。
「最高よ、またデザインお願いするわね」
「いいですか」
「いいわよ」
「自信ないですね」
「貴女はそうね、自己評価低いわね」
「どうしても」
「それならそれでいいわ」
江田はそれでもと言った。
「別にね」
「そうですか?」
「自己評価が低いのも自分を見ていて」
そうしてというのだ。
「自分を認めているのよ、自己評価が高くてもね」
「同じですか」
「そうよ、だからね」
「自信なくてもいいですか」
「そのせいか伊東さんお仕事慎重にこつこつとして」
「いいですか」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「いいと思うわ」
「そうですか」
「自信なくてもね。自信を持てなくてもね」
「いいんですね」
「それならそれでね、自己評価だから」
「受け入れるといいんですね」
「自信がない自分もね、嫌いにならないで」
そうであってというのだ。
「これからもね」
「やっていけばいいですね」
「お仕事も他のこともね」
こう伊藤に言うのだった、そして伊藤は微笑んで頷いてだった。
それからは自信のない自分を受け入れて否定しない様になった、すると表情が明るくなり前よりも前向きになった。
そんな彼女に対してだ、木村はいつも通り職場の中で言った。
「俺よく周り見ろって言われるよ」
「そうなの」
「自信あって出来るのはいいけれどな」
それでもというのだ。
「よくな」
「そう言われるんですね」
「ああ、仕事が出来てもな」
「時々自信があり過ぎて周りを見ないってな」
「そう言われるのね」
「ああ、けれどお前は慎重で周りも見るからな」
「いいのね」
「そうしたところ見習わせてもらうな」
こう伊藤に言うのだった、伊藤は彼のその言葉からも自分を受け入れる様になった。自己評価が低く自信がないのもまたいいことだと。
自己評価が低いことも 完
2024・5・26
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