八十四 四代目の子
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の檻に近づいた。
《やめんか小娘…!》と檻の内から九喇嘛が叫ぶ。
しかし正気を失ったナルの耳には何も届かない。
苦しみと哀しみから逃れたい一心で、彼女は九尾の封印の札を外そうとし…──。
その腕を、誰かに止められた。
檻から強制的に引き離される。
《おまえは…》
檻の内から、九喇嘛が唸り声をあげる。
憎しみと恨みが込められた九尾の視線を背中で受けながらも、その男は朗らかに笑ってみせた。
「八本目の尾まで封印が解放されてしまうと、俺がお前の意識の中に出てくるように封印式に細工しておいたのさ」
バサリ、と白い羽織がはためく。
そこに施された名を見たナルの眼が、赤色から青色へ変わった。
「なるべくはそうなってほしくはなかったが…、」
そこで言葉を切って、男は檻を振り返る。
唸り声をあげる九喇嘛を、彼は肩越しに鬱陶しげに見やった。
「もうお前にも会いたくなかったしね…九尾」
「そうだな」
刹那、ナルの身体が沈む。
「四代目…火影…」と信じられないモノを見たとばかりに彼女が言葉を発した直後だった。
ガクリ、と水面に膝をつく波風ナルに驚いて、四代目火影の羽織を羽織る男が近寄ろうとしたその瞬間。
「俺もアンタには会いたくなかったよ」
ナルを守るように彼女の前へ立ちはだかった誰かが、男を睨む。
ほんの一瞬、九尾が閉じ込められた檻を振り返った瞬きの間。
その刹那の間に現れた誰かが、自分を睨んでいる。
だが決して、此処、ナルの深層心理の世界に外部の人間が立ち入ることができるはずがない。
しかしながら現に、目の前に佇む誰かは男の名を呼ぶ。
波風ナルが気を失う直前に口にしたその名を。
否。
「四代目火影…いや、」
驚いて身体が強張った男──四代目火影たる波風ミナトは眼を瞬かせる。
波風ナルと同じ蒼の双眸。金色の髪。
そうして、自分そっくりの相貌。容姿。
「…ナ、ルト……」
実の息子の名を口にしたミナトを睨みながら、うずまきナルトは忌々しげに吐き捨てた。
「────クソ親父」
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