八十四 四代目の子
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暴走するナルに怒鳴っていた九喇嘛がとうとう、苛立たしげにその名を呼ぶ。
《いい加減に眼を醒ませ、小娘…──ナルッ、》
それは初めて、九喇嘛が波風ナルをその名で呼んだ、瞬間だった。
だがその直後、ペイン天道が術を発動させる。
「【地縛天星】」
漆黒の球体があらゆるものを引き寄せてゆく。地面ごと抉り取り、瓦礫も木々も全てがその球体へ引き寄せられる。
それは九尾化したナルも例外ではない。
凄まじい引力に引き寄せられ、球体の中へ引き寄せられたナルを圧し潰すように、同じく引き寄せられた瓦礫や地面が球体に寄せ集まって肥大化してゆく。
やがてソレは術の名の通り、小さな星のようになった。
その星に閉じ込めたナルを見上げ、ペイン天道は肩に入れていた力と緊張を僅かに緩ませる。
一方、ペインを操る長門は、大きく肩で息をした。声がでない。荒い呼気が喉を灼く。
ようやっと辛うじて出た声は、己の仕事の終わりを告げていた。
「九尾捕獲…完了」
こぽり、
こぽり、と水面が泡立つ。
灼熱の地獄のような真っ赤な液体に、ナルは沈んでいた。
長い金の髪が、水上の波紋に呼応して、揺れ動く。
茫然自失しているその青い瞳には、いつもの光がなかった。
沈んだ双眸で彼女は自問自答する。
(なんでだ…なんで、)
苦しい。全てを投げだしたい。掻き毟りたくなる。
歯痒い。泣きたい。胸に何かがつっかえてしんどい。
(なんで…こうなっちまう…)
木ノ葉の里を助ける為、颯爽と現れたつもりだった。
里の危機を救おうと苦しい修行にも耐え、戦った。
だがその結果がこれだ。
(くるしい…)
ペイン天道がナルに投げかけた問いがずっと脳裏に響いている。
『お前なら平和をつくるため、この憎しみとどう向き合う?』
わからない。そんなのわからない。
心と感情に呼応するように、金色の髪が波打つ。
(イヤだ…)
ナルのお腹に施されている封印術が、ス…と音もなく滲みでてくる。
普段は消えているソレが色濃く、彼女の白い肌に浮き出てきた。
(イヤだイヤだイヤだイヤだ)
術式が濃くなるにつれ、まるで円を描くように封印術の中心が廻る。
ぽたぽた、と術式から雫が滴る。
血のように紅い、いやどす黒い何かが封印術から溢れ出す。
それはナルが沈んでいた水面の色を真っ黒に塗り替えるほどのもので。
漆黒の液体に沈む彼女の金の髪がより一層映えた。
ナルの青い瞳が赤に変わる。黒い水上を、ふらり、歩く。
そうして彼女は、九尾
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