八十四 四代目の子
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インの姿もないことをしっかりと判断してから、いのは瓦礫と地面のみに化した急斜面を滑る。
シカマルのもとへ辿り着いて、しかしながら彼女は息を呑んだ。
酷い有様だ。
辛うじて息をしているものの、時間の問題である。
足は折れ、肩は貫通して穴が開いている。
血溜まりに沈む幼馴染の姿に、ショックで身体が強張ってしまったいのの代わりに、ヒナタが真っ先にシカマルの容態を診た。
「……ひどい…」
難しい表情で呟く彼女の声に、ハッ、と我に返る。
急いでヒナタと同じように医療術を使おうと手を翳した。
だが…──。
「致命傷を受けてる…これじゃ、」
(綱手様がいてくれたら…!)
そう思わずにはいられないほど、酷い状況だ。
あの聡い幼馴染ならば致命傷を避けるくらい計算してそうだが、そうも言ってられないほどなりふり構わずに、ペインに立ち向かったのか。
あの、シカマルが?
にわかには信じられない。
だが、ヒナタの「どうしてこんな無茶…」という不安げな疑問には、いのは胸を張って答えられる。
ナルをずっと見ていた幼馴染の姿を昔からずっと知っている身、これだけは断言できた。
シカマルはナルを見捨てられなかった。見て見ぬふりをできなかった。
その結果を目の当たりにして、自らの不甲斐なさにいのは唇を噛み締める。
想い人を庇った誇り高き幼馴染を自分は救うことも出来ないのか。
精一杯の力は尽くしている。医療知識も技術も、自らの持てるチャクラの全ても使っている。
けれど、医療忍者としての冷静な頭と判断が、冷静に答えを導き出す。
もう手遅れだ。
助けられない、と。
それに抗うように、いのはシカマルに手を翳す。
しかしながら、ヒナタもいのも、今し方までひたすら、里の怪我人の治療にあたっていた。
自らも相当の疲労が溜まっている上、チャクラも残り少ない。
この絶望的状況でシカマルを助けることは不可能だ。
医療忍者として優秀だからこそ、諦めろと囁く頭脳に絶望するいのの隣で、同じく治療に専念していたヒナタは、視界の端で捉えた不思議な気配に、一瞬顔を上げた。
【白眼】を発動させている白い眼を瞬かせる。
蝶だ。
それも一匹や二匹ではない。
美しい蝶々がまるで花畑に集うかのように、シカマルに群がってくる。
治療の邪魔だと払いのけようとしたいのの手を、ヒナタは掴んだ。
「待って…」
シカマルの様子を見るように促すヒナタに従って、いのは幼馴染を見遣った。
ちょうど、シカマルが怪我を負っている部分に、蝶が集中している。
やがて、蝶々が離れてゆく頃には、あれだけ荒かったシカマルの息遣いが落ち着いたものになっていた。
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