暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
XV編
第203話:天空は墜とさせない
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場にアルカノイズを解き放とうとする。それを合図にベルゼバブ達も突入し、会場を襲う手筈となっていた。

…………筈だった。

「――――え?」

 突如として、会場上空に展開されそうだった錬金術が無効化された。まるで何かの干渉を受けたかのように術式が霧散し、会場上空にはただ光の粒子が散るだけで終わってしまった。恐らく観客からは、それもコンサートの演出の一つとしか見えなかったかもしれない。

 ただ事ではないのがミラアルク達だ。何事もなく展開する筈だった術が霧散したと言う事はつまり、何者かの干渉を受けたと言う事。無論ミラアルクが術の展開に失敗したと言う可能性も無くは無く、ベルゼバブはその可能性を疑い彼女に詰め寄った。

「何をしているのです。さっさと会場にアルカノイズをッ!」
「わ、分かってるんだゼッ! でも、何で……!?」

 何度やっても錬金術は展開できず、魔力は会場上空で霧散するだけに留まった。ここまで失敗が続けば、流石に誰もが何者かの横槍を疑う。

「邪魔者が居る? だが、どうやって……! マズイッ!?」

 絡繰りは分からないが、誰かがこちらからの干渉を跳ね除けているのは確か。そして現在進行形で術の妨害をしていると言う事は、その相手はこちらの位置も探っている可能性が高い。逆探知の要領でこの場所が知られれば、その相手は躊躇なく殴り込んでくる。

 危険を察したベルゼバブが急いで全員に撤退を指示しようとした、正にその時、彼らの耳にこの場に居ない筈の男の声が響いた。

「よぉ、悪いがもう会場は満員御礼なんだ。残念だがお前らが入る余裕はもう無いぜ」
「ッ!?」

 響く声のする方をベルゼバブ達が見上げれば、彼らが居るビルよりも高いビルの屋上に佇むウィザードに変身した颯人を始めとしたS.O.N.G.の装者、魔法使い達の姿があった。未だ会場で歌い続けている奏達を除いた、S.O.N.G.の全戦力がこの場に集まりジェネシスと対峙する。

 自分達を見上げるジェネシスの魔法使い達を前に、颯人は静かな怒りを滲ませながら言葉を紡いだ。

「折角奏達が気持ち良さそうに歌って、それを皆が楽しんでんだ。それを邪魔しようとした……お前ら、覚悟は出来てんだろうな?」

 颯人の言葉に、ベルゼバブは背筋が震えあがるのを感じた。単純な怒りを向けられたからと言うだけの話ではない。気のせいか、彼の背後に燃え上がる炎とその中からこちらを睨むドラゴンの姿を幻視したからである。

 そんな彼らを見下ろしながら、颯人はウィザーソードガンの切っ先を向けて口を開いた。

「さぁ、タネも仕掛けもないマジックショーの始まりだ。たっぷり楽しんでいけ」
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