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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
激闘編
第八十六話 国境会戦(前)
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けとなるだろう。だが反論するミュラー大佐の言もまた正しいものだった。両者の意見を静かに聞いていたラインハルト様だったが、断を下した。
「両者の意見はそれぞれに理に叶っている…まずは第十三艦隊の撃破に専念するとしよう。参謀長、メルカッツ艦隊に連絡だ。我々が前進して敵の第十三艦隊に対処する、貴艦隊はまもなく現れるであろう敵の増援に対処されたし…以上だ」
「了解致しました」
ラインハルト様は折衷案を採るおつもりの様だ。


9月30日04:50
フォルゲン星系第七軌道、自由惑星同盟軍、第十三艦隊旗艦ヒューベリオン、
ヤン・ウェンリー

 「閣下、我が方に近付く艦隊ですが、どうやら新規編成の艦隊の様です。識別コードのない旗艦級戦艦が存在します」
ボーデンの敵と合わせてこれで帝国軍は六個艦隊が勢揃いした事になるが…。
「了解した参謀長。他に敵はいないか索敵を行ってくれないか?」
「…これで敵は六個艦隊が現れた事になりますが、ご懸念がおありですか?」
「うん。ボーデンが主戦場だとして、帝国軍がここに艦隊を派遣するのは理解出来るんだが、だとすればこちらに派遣された敵艦隊の任務はこの宙域の監視か、我々の牽制だろう。だがあの敵艦隊はどんどんこちらに近付いてくる」
「…我々は少数です。敵は少しでも戦いを有利にするために我々の撃破を狙っている、のではないでしょうか」
「まあ、それもあるだろう。だがもし敵が我々に負けたら?敵艦隊は元の任務を果たせない。他にも敵艦隊が居るんじゃないかな、だとすれば、近付いてくるあの艦隊が破れても、元の任務は残った艦隊で継続出来るからね」
「…了解しました。強行偵察の戦闘艇を出します」
敵はおそらく六個艦隊ではないだろう。でなければあの艦隊の動きは理解出来ない。彼等の立場からすれば、こちらが半個艦隊…我々だけでこの宙域を守るとは考えにくいだろう。増援があるのではないか、と危惧している筈だ。だとすれば、あの艦隊が動く事によってこちらがどう動くか、敢えて戦闘に参加せずに状況を見ている敵がいる筈だ。
「……強行偵察の戦闘艇より入電、接近する艦隊の後方、星系外縁部に新たな敵艦隊、熱量から推定して一万隻以上、約四百光秒!」
オペレータが報告の金切り声を上げた。
「閣下、このままでは我が方が著しく不利です。後退し、此方に向かっている第九艦隊と合流すべきではないですか」
「大丈夫だよムライ中佐、接近する敵艦隊はまだ機雷原にすら到達していない。戦い様はあるさ」
撤退を進言したムライ中佐をラップが抑えている。そう、我々だって手をこまねいてただボーっとしていた訳じゃない。前面には合計六百万個の機雷を敷設してある…時間稼ぎにしかならないが…。



9月30日05:30
フォルゲン星系第六軌道、銀河帝国軍、ミューゼル艦
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