激闘編
第八十六話 国境会戦(前)
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いた。二人の能力もさることながら、ラインハルト様の今後を見据えての事だった。確かにラインハルト様は中将、艦隊司令官だが、実戦部隊の中枢…宇宙艦隊司令部といち艦隊司令官とでは見えるものが違ってくる。確かに今のラインハルト様はミュッケンベルガー元帥の信頼を得ているが、先の事を考えるとそれだけでは足りないのも事実だった。そこで将来のラインハルト閥とも言うべき物を担う俊秀の更なる発掘と、実戦指揮官としても優秀であるが、どちらかというと戦略家的発想の多い二人に、更に戦局全体を見渡す経験を積んで貰う…この二つを実践する為に異動して貰ったのだ。当然ながら、宇宙艦隊司令部入りというのは二人の経歴には大きなプラスとなる。
『宜しいのですか、本当に』
『ああ。経歴上、卿等の今後の為にもなる。まあ、私の目となって欲しい、というのが本音ではあるがな。それに、将来を考えると戦局全体を見渡す事の出来る者の存在は不可欠だ。卿等は指揮官としても優秀だが、参謀としても稀有な能力を持っている。それに磨きをかけて欲しいのだ』
ミュッケンベルガー元帥はおそらくラインハルト様の意図を見抜いているだろう。だがその意図を嫌悪する事はないだろうと思うのだ。元帥とていつまでも宇宙艦隊を率いる事は出来ない。彼が自分の後継を、と考えた時、脳裏にラインハルト様の名前が無いのでは話にならない。その為に今からその布石を打っておくのは重要だった。
「どうやら叛乱軍の第十三艦隊とやらは我々の反対側の…星系第七軌道を周回する小惑星帯に潜んでいる様ですな。規模は我々のおよそ半分、急進してこれを撃破すれば、アムリッツァに進撃する事も可能だ。戦局全体に与える影響は大きいと愚考する」
新しく参謀に抜擢されたビッテンフェルト大佐の意見だった。
「叛乱軍とて半個艦隊に過ぎない第十三艦隊のみにこの宙域を任せはすまい。必ず増援があるだろう。それに彼等を撃破したとしても、アムリッツァに進攻する半ばでその敵増援に出くわすだろう。むやみやたらに矛を交えるのではなく、増援の規模を見極めてからでも遅くはないと思うが」
これはミュラー大佐の意見だ。
「ボーデンでは既に戦端は開かれているのだ。ここフォルゲンで第十三艦隊を撃ち破れば、敵の士気に与える影響は大だろう。敵との戦力差を縮める為にも早急に対処すべきだと思うが」
「敵十三艦隊は星系第七軌道の小惑星帯に潜んでいる。何か策を講じているに違いない。メルカッツ艦隊と共にこの宙域を任されておればこそ、短慮や軽挙妄動は慎むべきと考える」
ビッテンフェルト大佐の意見は正しい。敵が増援部隊と合流する前に叩く。そうすれば叛乱軍の目はフォルゲンに向けられる。結果として叛乱軍の、元の増援の規模以上の戦力を此方に誘引出来るかもしれない。それは主攻であるボーデン方面の味方にとって大きな援
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