第七百五十二話 苗字がない家その四
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「いてね」
「お役所で却下されるのね」
「幾ら何でも酷いって」
「そうよね」
「他にも日本以外の国だけれど」
ジョーはこう前置きしてベスに話した。
「ハイドリヒの名前をそのままね」
「ハイドリヒってあの」
「そう、あのよ」
顔を顰めさせたすぐ下の妹に彼女と同じ表情になって答えた。
「ナチスの親衛隊のね」
「物凄く悪い奴よね」
「ナチスの謀略や弾圧を象徴する」
まさにそうしたというのだ。
「とんでもない悪人よ」
「そうよね」
「冷酷で残忍で女好きで」
この評価は生前からであった。
「もう人間離れした」
「そんな悪い奴よね」
「何を考えてか自分の名前をね」
「ハイドリヒのものにしようとしたの」
「ラインハルト=トリスタンとかいう」
ワーグナーの作品の主人公の名前も入っているのは彼の両親が名付けたからだという。尚彼の主君ヒトラーはワーグナー好きで有名である。
「それにしようとして」
「却下ね」
「もうその場でね」
お役所でというのだ。
「これは駄目だってね」
「ハイドリヒの名前だから」
「そうなったらしいわ」
「当然よね」
「ええ」
ジョーもまさにと答えた。
「私もよ」
「そう思うわよね」
「流石にこうした名前は駄目よ」
「ドキュンキラキラネームは」
「ハイドリヒはそうじゃないけれど」
それでもというのだ。
「流石にね」
「極悪人の名前だしね」
「中国じゃずっと秦檜の名前は避けられていたい」
これは中国最大の英雄岳飛を死に追いやったからだ。
「売国奴って言われて」
「あの人ね」
「確かに色々問題があったけれどね」
秦檜はだ。
「金と水面下でお話して妥協して」
「政治家としては当然でしょ」
「金に勝てないと見てね」
そして金も宋を滅ぼせないと見たのだ、その意味で両者の意見は一致していたのだ。それで講和の話になったのだ。
「かなり領土は失ったけれど」
「講和になって」
「けれど岳飛さんは戦うって言って」
ジョーはこの英雄の話もした。
「挙句宋じゃご法度の軍閥持ってたし」
「自分の軍隊を」
「これは看過出来ないってなってね」
秦檜個人よりも宋という国の意志があったというのだ。
「それでね」
「粛清ね」
「そうなったけれど」
そうであるがというのだ。
「英雄を殺したから」
「秦檜さん評判悪くて」
「それでね」
「名前もなのね」
「使われていなかったのよ」
中国ではというのだ。
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