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水の国の王は転生者
第八十六話 野心家達の春
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マニア騎士団は、元々はゲルマニア人を中心に構成されたロマリアの聖堂騎士隊 (パラディン)の一派だったが、何百年か前の聖戦に参加して戦いに敗れたものの、プライドの高さゆえか、ロマリアに帰るのを嫌がった騎士たちが、ゲルマニアのブランデルブルク辺境伯領周辺でうろついていた所を、時のブランデルブルク辺境伯に声を掛けられ、忠誠の代わりプロイゼン地方を与えられたのが始まりとされる。

 入植したての頃のゲルマニア騎士団は、ロマリアの聖堂騎士隊(パラディン)ゆえか、傲慢な騎士が多かった。
 だが、ハルケギニアのブリミル教圏において最も北に位置する厳しい環境が、傲慢な聖堂騎士隊(パラディン)の気風を調整し、厳しい環境でも弱音を吐かずに任務を遂行し、質実剛健をそのまま形にした軍人の鑑の様な男達に変化して行った。

 そんな騎士団が、色々と問題のあるブランデルブルク辺境伯に従うのは、彼ら騎士団は『例えどの様な主君であっても忠誠を尽くすのが本物の騎士』と、自分達が作り出した『騎士像』を追求する一種の求道者でもあったからだ。

 だが、そんなゲルマニア騎士団を悪く言う声がチラホラと見られた。

 例えばこういう事があった。

 『どの様な環境でも弱音を吐かず任務を遂行するのが本物の騎士』と、猛吹雪の中、上半身裸で何十リーグも雪中行軍する訓練が恒例化していて、苦しそうな顔を少しでもすると、周りの騎士から鞭が飛んだりと、常軌を逸した訓練が有名で、訓練で死んでしまう者も少なくない。

 口が悪い者からは『ドM騎士団』と言われていたが、その勇名はハルケギニア全土に轟いている。

 いまだ雪深いプロイゼン地方のゲルマニア騎士団の居城マリエンブルグ城では、主君であるブランデルブルク辺境伯からの出動命令で、戦の準備に明け暮れていた。

 騎士達は全身に銀色に輝くフルプレートアーマーを身に纏い、白地のサーコートにはゲルマニア騎士団の紋章である黒十字(バルケンクロイツ)が描かれていた。
 ちなみにサーコートとは、鎧の上に羽織るマントの様な衣服の事をいう。

 騎士たちが、身に纏った鎧をガチャガチャ鳴らしながら準備に右往左往している中、騎士団の長である総長(ホッホマイスター)の部屋では、一人の男が出発前の準備に追われていた。

 金髪碧眼で長身の青年、ゲルマニア騎士団総長のフリードリヒは、主君のブランデルブルク辺境伯からの指令書を読み終え、指令書を木製のテーブルの上に置いた。

(いくさ)か、久々の人間相手の戦だ。腕が鳴る」

 少々高めの声色が室内に響く。
 ここ数十年のゲルマニア騎士団は、プロイゼン地方よりさらに北の寒くて人が住めない土地から侵入してきたモンスターの退治が主な任務だった。

「しかし、曲がりなりにも、公文書である指令書に
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