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金木犀の許嫁
第十八話 忍の家その十一

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「そうしている」
「私は別にね」
 夜空は佐京の話を聞いて言った。
「人を憎んだり怨んだり」
「そうしたことはないんだ」
「あまり強くないと思うわ」
 こう言うのだった。
「これといってね」
「そうなんだ」
「ええ、自分でもいいことって思ってるわ」
「そうだね、憎しみとか怨みが強いと」
「駄目よね」
「今お話している通りに」 
 こう夜空に話した。
「やっぱり」
「そうよね、だからね」
「夜空さんもなんだ」
「自分に憎しみとか怨みの感情があまりなくて」
 そうした性格であってというのだ。
「本当にね」
「よかったって思っていて」
「このままね」
「いたいんだね」
「そう思ってるわ」
 佐京に顔を向けて答えた。
「怨みだって強いと」
「よくないよ」
「憎しみが強過ぎると復讐鬼になるっていうけれど」
 佐京が今しがた話したことをそのまま話した。
「怨みも強いと」
「いいことはないよ」
「怨霊になるわね」
 真剣な顔で述べた。
「そうなるわね」
「うん、怨霊は怨みが強過ぎて」
 そうなってというのだ。
「そのうえでなる」
「そうよね」
「これは死んだ場合もなって」
「生きていてもよね」
「生霊もいるから」
 そう呼ばれる幽霊も存在しているというのだ。
「だから」
「そうよね」
「生きていても怨霊になる、何でも」
 佐京は暗い顔になって話した。
「雨月物語にはそうしたお話があるそうだし」
「ええと、上田秋成さんの」
「あの人の作品にあって」
 それでというのだ。
「凄く怖いらしい」
「そうなのね」
「吉備津の釜って作品で」
 雨月物語の中で特に有名な話である、結婚してはならないと占いで出てそれでも結婚して不幸になる話である。
「生霊も出て死霊も出るけれど」
「両方が」
「そのどちらも」
「怨霊なのね」
「それで凄く怖いらしいから」
「そうなのね」
「幸雄さんが詳しい」
 彼がというのだ。
「あの人文学通で」
「それでなの」
「色々な本を読んでいて」
 そうであってというのだ。
「雨月物語もそうで」
「読んでおられるの」
「それで」
 そのうえでというのだ。
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