第十八話 忍の家その九
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「坊主憎けりゃ袈裟まで憎いで」
「何もかも嫌って」
「否定してね」
そうなってというのだ。
「その人のことなら」
「もう何もかも否定して」
「全力でね」
「嫌い抜いて憎み抜いて」
「もうそんな風にはならない」
「そう思ってね」
「努力する人はいるけれど」
佐京は困った様な顔で話した。
「それは」
「違うわよね」
「努力自体はいいことでも」
「否定してね」
「嫌って憎んで」
そうしてというのだ。
「反面教師にするにしても」
「ああはなるまいどころか」
「やがてはね」
「嫌いな相手に牙を剥いて」
「徹底的に滅ぼして」
そうしてというのだ。
「まだ否定する」
「そうなったら」
「何かが違うよ」
「人として」
「うん、駄目な人を反面教師にすることはよくても」
このこと自体はというのだ。
「けれど」
「嫌って憎んで」
「徹底的に否定して」
「そのうえでだとね」
「努力も」
それもというのだ。
「歪になるよ」
「そうなるわね」
夜空も否定しなかった。
「絶対に」
「ひいお祖母さんに言われたから」
佐京はここでまた彼女の話をした。
「人間憎しみに囚われたら駄目だって」
「例え努力する様になっても」
「そうなったら復讐鬼になるって」
「復讐鬼ね」
「憎い相手を忘れないで怨んで呪って」
そうなってというのだ。
「相手を見付けたら全力で攻撃して」
「それで止まらないわね」
「例え相手が滅んでも」
そうなってもというのだ。
「まだね」
「攻撃するのね」
「死体に鞭打つで」
史記にある伍子胥の故事である、自身の父と兄を殺した楚の愚王平王の墓を暴きその躯を鞭打ったのだ。
「そうしたこともする」
「相手の人が死んでも」
「まだ許さないで」
そうしてというのだ。
「攻撃を続ける」
「そうなるのね」
「死んだら終わり」
佐京は言った。
「誰でも」
「普通はそうよね」
「けれど」
それがというのだ。
「そこまでしたら」
「幾ら憎くても」
「おかしいよね」
「何かね」
夜空は嫌そうに話した。
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