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恐怖の予科練
第二章
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「パイロットを育てる予科練は」
「どんなのですか?」
「地獄だったみたいだよ」
「地獄ですか」
「その地獄ぶりはこのお店の近くの喫茶店の前の店長さんが知ってるよ」
「その人がですか」
「今は引退して大抵お店の奥に引っ込んでるけれどね」
 それでもというのだ。
「百歳近いから」
「かなりのご高齢ですね」
「その人が実際に予科練だったから」
 だからだというのだ。
「よくご存知だよ」
「まだそんな人生きてるんですね」
「うん、だから聞いてみたらいいよ」
「どんな地獄だったか」
「ちなみに海上自衛隊では幹部でパイロットだったよ」
 遠藤はその老人のそのことも話した、梶はその話を聞くとまずは昼食を終えると遠藤と一緒に職場に戻って午後の仕事に励んだ。
 そしてだ、仕事が終わると遠藤に喫茶店の名前と住所を詳しく教えてもらい。
 奇麗な白い店のカウンターに座って今の店長に先代の予科練の話を聞きたいと話した、するとだった。
 髪の毛が一本もない一六〇位の背筋がしっかりした老人が出て来てだ、カウンターの中から彼に尋ねた。
「予科練の話を聞きたいんだって?」
「はい、地獄だったといいますが」
「ああ、もう海軍の中でも特に規律が厳しくてな」
 老人はすぐに答えた。
「ベッドの手入れも掃除も隅から隅まで、ちょっと皺か埃があるとやり直し」
「凄いですね」
「そして鉄拳制裁は兵学校並かそれ以上」
「兵学校凄かったんですね」
「訓練も凄かったな、皆鉄棒の大車輪が普通に何度も出来る位に」
 そこまでというのだ。
「鍛えられたな」
「えっ、大車輪ですか」
「航空機に乗ったらもっと凄くてな」
 梶に笑いつつ話した。
「血を流すみたいだったな、死ぬ思いを何度もな」
「されたんですね」
「毎日な、そして戦場に行ってな」
「戦われたんですか」
「わしは予科練を出た時に終戦になったが」
 それでもというのだ。
「いや、本当にな」
「凄かったんですね」
「自衛隊に入ってどれだけ楽に思ったか」
「自衛隊も厳しいですよね」
 海上自衛隊の基地がある県の職員なのでよく知っていることだ。
「その自衛隊が、ですか」
「楽だよ、昔の自衛隊だけれどな」
「昔は今より厳しかったのに」
「そうだったよ」
 こう言うのだった、そしてだった。
 老人は梶に予科練の訓練と教育がどんなものかさらに話した、それは彼の想像を遥かに超えたものであり。
 翌日出勤してだ、遠藤に言った。
「予科練に行ってパイロットになれたら地獄も何でもないですね」
「そうだろ、だから強かったんだよ」
「刑務所より厳しい規律と身の回りの手入れに」
「鉄拳制裁、鬼みたいな訓練だったからな」
「いや、僕絶対無理です」
「僕もだよ、しかしそうした場
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