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恐怖の予科練
第一章

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               恐怖の予科練
 令和である、だが。
 とある海上自衛隊の基地がある県の職員遠藤勘太郎細い目に色白でやや丸い頭とショートの黒髪を持つ痩せた一七五位の背の彼はよくかつての大日本帝国海軍の話をしていた。
「やっぱり格好良かったな」
「今の海上自衛隊よりもですね」
「海上自衛隊は二番目だよ」
 職場の後輩の梶伸晃、大きな切れ長の二重の目で小さい赤い唇に形のいい顎を持つ一七〇位でやや癖のある赤がかった髪の毛の彼に言うのだった。
「一番となると」
「帝国海軍ですか」
「そう思うよ、僕は」
「先輩本当に海軍好きですね」
「規律正しくきりっとした雰囲気と」
 軍事組織特有のそれにというのだ。
「あの軍服がね」
「セーラー服ですね」
「それに士官の詰襟がだよ」
「夏は白、冬は黒の」
「それが好きなんだよ」
「それと軍艦もですね」
「航空機もね」
 兵器の話もした。
「陸軍も陸上自衛隊も嫌いじゃないよ」
「そして航空自衛隊も」
「そうだけれどね」
「先輩は海軍が一番ですね」
「好きだよ、あとね」
 遠藤は梶にさらに話した。
「入るのは難しかったんだよ」
「志願制でしたね、海軍は」
「陸軍は徴兵制だったけれど」
 戦前特有のこの制度で兵士を揃えていたのだ。
「身体検査と行いを見て厳密にだったから」
「そうはなれなかったんですね」
「そうだったしね、並大抵じゃね」
「陸軍も入隊出来なかったですね」
「そうだったよ」
「それで海軍もですね」
「入隊検査厳しくて」
 そうであってというのだ。
「中々ね」
「入隊出来なかったですね」
「むしろ入隊出来たら凄い」
 遠藤は真顔で言い切った、昼食の時海が見える店で梶にカレーライスを食べながら言ったのだった。
「そんなものだったよ」
「海軍は」
「兵学校は特に厳しくて」
 海軍士官を育成するその学校はというのだ。
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