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第百二十八話 人は強くなってもその十一

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「なくなるから」
「いいわね」
 二人で話した、そして留奈はこうも言った。
「あれよね」
「あれっていうと?」
「いや、巨人が悪でね」
 このことは絶対の定義である、巨人を悪と言わずして何を悪と言うのか。
「他のチームはどうなるか」
「悪を成敗する正義ね」
「そうなるわね」
「日本ハムを含めてね」
 北海道の娘は自分が応援するチームも入れて話した。
「日本のプロ野球って正義と悪でよ」
「分かれてるわね」
「邪悪な巨人と」 
 それにというのだ。
「その巨人を成敗するね」
「十一チームがね」
「正義で」 
 そうであってというのだ。
「その正義がね」
「ひたすら悪を成敗しているわね」
「それがね」
 そうした状況がというのだ。
「今の日本のプロ野球よ」
「そうね」
 留奈もまさにと頷いた。
「昔は違ったけれど」
「昭和の頃はね」
「巨人軍大鵬卵焼きで」
「もう巨人がね」
「正義だったのよね」
「おぞましいわね」
 北海道の娘は心から思って言った。
「つくづく」
「そうよね」
 留奈も同意して頷いた。
「巨人が正義って」
「マスコミの宣伝でね」 
 さながら北朝鮮のプロパガンダの様なそれによってだ。
「巨人が正義で」
「漫画なんてね」
 この媒体ではというのだ。
「主人公は絶対にね」
「巨人だったのよね」
「魔球漫画なんか」
 このジャンルの漫画はというのだ。
「無茶苦茶ね」
「巨人ばかりだったのね」
「うちの漫画部に友達いてね」
「漫画部で読ませてもらったの」
「昔の魔球漫画ね、昭和三十年代の」
 その頃のというのだ。
「四十年代もあったけれど」
「全部巨人なの」
「ええ、巨人の星もそうだったでしょ」
「文字通り巨人よね」
「糞親父が出て来るね」
 この作品は父親も有名であるが昔からその教育方針については言われている、あまりにもおかしいのではとだ。
「あの作品ね」
「あの親父確かに酷いわね」
 留奈も同意だった。
「あいつだけ戦死したらよかったのにね」
「戦争があってもね」
「何でかあいつ生き残って」
「あんなことしてたのよ」
「あの戦争いい人から死んだっていうけれど」
「プロ野球もね」
 二次大戦での日本の戦死者は三百万に及ぶ、尚ソ連は二千万であり当時二十代だった成人男性の数が極めて低くなった。
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