第二章
[8]前話
「大丈夫ですか?あの人」
「そう言われますと」
社長も困惑する顔で応えた。
「私共も」
「視聴率はいいですが」
「俳優さん達からの評判はいいです」
「ですがスタッフの人達から不安の声が」
「スタントを担当している劇団の方からもです」
「不安の声が出ていますね」
「スポンサーからも、そして今」
社長は原作者を見て切実な声で言った。
「貴方もですから」
「あの、政策方針の変更は」
「真剣に考えています」
これが社長の返答だった、このままでは番組もっと言えば作品のシリーズが彼が納期や予算それにスポンサーを一切無視しやりたい様に勧めるそれで破綻しかねないと判断してだった。
社の重役会議で森に政策方針の転換を通達することにした、だがその通達を聞いても森は方針を変えないと宣言した。
「この作品は私が作っています」
「だが遂に原作者の人が不安視しだしたんだ」
社長は森に真剣な顔で告げた。
「もうこれ以上は無理だ、方針を変えるんだ」
「それではいい番組が作れません」
「その前にシリーズ自体が破綻するぞ」
「面白い番組があってこそです」
森は社長の言うことも聞かなかった、こうなってはどうにもならなかった。
そして遂に彼は更迭となり後任のプロデューサーとメイン脚本家が作品を終わらせることにした、これにより作品もシリーズも何とかなったが。
しかしだ、スタッフ達は思うのだった。
「幾ら言い番組を作りたくてもな」
「何でも自分のやりたい様には駄目だよ」
「口出ししまくって全部やって」
「予算や納期を考えないんじゃな」
「スポンサーも上司も無視してとか」
「挙句原作者の人まで不安に思うなら」
「作品以前だよ」
それこそというのだ。
「それがわかってないとかな」
「困った人だな」
「本当にな」
「あそこまでいくと全体主義でやれってなるけれど」
「全体主義だとあの人こそ真っ先に粛清されるよ」
こう言ってだった。
彼等は次の番組に向かった、以後森はその会社で制作に関わらなかった。だが転職した次の会社ではプロデューサーになった。そして同じことをして番組発表が一年遅れてまた制作に関われなくなった。多くの者はそれを見てやはりと思ったのだった。
悪夢のプロデューサー 完
2024・5・19
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