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ド派手メイク
第二章

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「歌舞伎はもっと派手ですね」
「そうだね」
「それで私入鹿で」 
 この役でというのだ。
「隈取青ですが」
「隈取は血の色を再現してるよ」
 石田はこのことも話した。
「流れるね」
「それでこの役青ですけれど」
 隈取がとだ、萌絵は話した。
「公家悪はそうですね」
「蘇我入鹿は公家悪でね」
 歌舞伎の役の一つだ、文字通りに悪役の公家である。
「そうだよ」
「流れる血を表現ですね」
「そう、公家悪もね」
「それが青なら」
 それならとだ、萌絵は言った。
「公家悪の血は青で」
「そこも人間じゃないね」
「凄い役ですね」
「萌絵ちゃんはその役を演じるんだよ」 
 石田は笑って話した。
「そのことを意識してね」
「それで、ですね」
「演じるんだよ、だからね」
 それでというのだった。
「頑張ってね」
「わかりました」 
 確かな顔と声になってだった。
 萌絵は石田に頷いて応えた、そしてだった。
 舞台で蘇我入鹿を演じた、すると素顔から想像出来ない位に強烈な悪役だったと評判だった。そうしてだった。
 舞台が終わった後でだ、石田に打ち上げの飲み会でこんなことを言った。
「今回色々と勉強になりました」
「歌舞伎のことで」
「はい、設定もあらすじも隈取も」
「面白いよね、歌舞伎って」
「そうですね、また機会があったら」 
 ビールのジョッキを片手に言った。
「やりたいですね」
「そうだね、裏方もどうかな」
「やりたいです、歌舞伎に関われるなら」
「やっていきたいね」
「そう思う様になりました」
「歌舞伎は今は男の人の世界だけれど」
「こんな面白いもの女の人もしたいです、大体です」 
 ジョッキ片手に言うのだった。
「元々はじめたのは出雲の阿国で」
「女の人だね」
「ですから」
「うん、女の人もね」
「やっていいですね」
「そこは変えていくといいね」
「はい、そうしていきたいです」
 萌絵は明るく強い声で言った、そして大学卒業後就職してから女性歌舞伎を提唱した。それが女歌舞伎の復権出雲の阿国以来のそれにつながるのだった。


ド派手メイク   完


                    2024・5・19
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