第二章
[8]前話
「だからな」
「用心してだな」
「持って行こうな」
「それじゃあな」
こう話してだった。
二人は実際にお守りにお経それに塩を持って行った、そうして石毛の自動車に乗ってドライブをしたが。
出るという場所に夜に入ってだ、運転している石毛は助手席に座っている辻にそのトンネルの中で言った。
「ここだよな」
「ああ、出るっていうな」
「大丈夫だよな」
「絶対にな」
辻はこう答えた。
「お守りにお経にな」
「塩もな」
「持ってるからな」
「幽霊は来ないな」
「その筈だよ」
二人でトンネルの中で必死に進んでいった、車をひたすら進んでいった。そしてトンネルを出た時に言った。
「出なかったな」
「そうだったな」
「よかったな」
「全くだよ」
「若し出たら」
石毛はこのことを考えただけで顔面蒼白になって言った。
「もうな」
「考えただけでな」
「ぞっとするぜ」
「そうだな、考えるだけでな」
「出なくてよかったな」
「お守りとお経が利いたな」
「塩もな」
これもというのだった。
「持って行ってよかったな」
「若し持って行ってなかったら」
「考えるだけでぞっとするな」
「ああ、全部持って行ってよかったな」
「姿見ただけですぐに死ぬっていうし」
「見なくてよかったぜ」
二人は心から言った、そうしてだった。
目的地に着いてそこで楽しい時間を過ごした、そして後日そこでは実は幽霊は出ないとある人から言われたが。
二人はその人にだ、真顔で言った。
「そう言いますけれどね」
「若し出たらどうするんですか」
「やっぱり備えあってですよ」
「魔除けも」
「実際俺達助かってますし」
「持って行ってよかったですよ」
こう言うのだった、そしてそれからもそうした場所に行く時はお守りなどを忘れなかった。塩もそうであった。
幽霊には塩 完
2024・5・19
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