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金木犀の許嫁
第十八話 忍の家その一

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                第十八話  忍の家
 佐京と一緒に家を出て登校する時にだ、夜空は隣にいて山を下る道を進んでいく彼に顔を向けて尋ねた。
「ちょっといい?」
「何かな」
「あの、昨日の夜白華ちゃんがちらっと言ってたけれど」
 こう前置きして言うのだった。
「佐京君達のひいお祖母さんって伊賀におられるの」
「うん」 
 佐京はその通りだと答えた。
「母方のお祖母さんのお母さん」
「そうなのね」
「伊賀じゃかなり古いお家の人」
「やっぱり忍者なのかしら」
「そう」
 小さく頷いての返事だった。
「あの人も」
「そうなのね」
「そして」
 佐京はさらに言った。
「昭和の伝説の忍者だった」
「伝説の」
「忍術の免許皆伝で」
 そうであってというのだ。
「それでかなり俊敏で隠れることも上手だった」
「そうした人だったの」
「それで美人だった」
「そうなの」
「今でもそう」
「お年寄りになられても」
「もう九十になるけれど」
 それでもというのだ。
「背筋はしっかりしていて」
「それでなの」
「凛とした人」
「そうなのね」
「それで若い頃は色気もあったらしいから」
「色気もあったのね」
「かなり。女の人の忍者は」
 それはというのだ。
「色仕掛けも仕事だったから」
「あっ、よくあるお話ね」
 夜空もその話お聞いて言った。
「相手を誘惑してとか」
「そうしたお仕事も多かったから」
 それでというのだ。
「維新からそうした仕事はしなくなったそうだけれど」
「それでもなの」
「ひいお祖母様は若い頃はとても奇麗で」
 そうしてというのだ。
「気品があった」
「そうした人だったのね」
「そう」
 まさにというのだ。
「まだ伝来の血筋を受け継いでいて」
「そのうえで」
「そうだった」
「そうなのね」
「うん、ただ」
「ただ?」
「今は引退されていて」
 忍者をというのだ。
「ひいお祖父様と穏やかに過ごされている」
「伊賀の方に」
「そうしている」
「そうなのね、ただね」
 ここで夜空は考える顔になって佐京に言った。
「伊賀っていうと」
「服部半蔵さん」
「家康さんのお庭番だった」
「そう、言うなら宿敵同士」
「その間柄よね」
「伊賀と十勇士は」
 同じ忍であってというのだ。
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