暁 〜小説投稿サイト〜
俺様勇者と武闘家日記
第3部
サマンオサ
三人の行方
[5/5]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
心したら涙出てきた……」
「なんで!?」
 まるで年頃の娘を持つ母親のようだ。心配してくれるのはありがたいが、少し大げさなんじゃないだろうか?
 止めどなく流れる涙を止めようと、私は話を切り替えることにした。
「それにしても、ルークってこんなに強かったんだね。驚いたよ」
 いくら町のごろつき相手とはいえ、あの技の繰り出し方は一朝一夕で身に付くものじゃない。男性たちを殴るまで全く気配を感じなかったのがその証拠だ。魔物退治の仕事というが、その技でいったいどれだけの魔物を倒してきたのだろう。
「やだなあ、買い被りすぎだよ。ていうかあいつらが弱すぎなだけだし」
 そんなことを無意識に言えるくらい、ルークは強い。それは彼の戦いを目の当たりにした私だから言えることだ。
「そんなことよりミオ、早くここから出よう。また変な人に絡まれる前に」
 すっかり涙を引っ込めたルークの言葉に従い、私たちは急いで格闘場を出た。格闘場を出ると、外の空気がやけに美味しく感じる。溜まっていたものを吐き出すように、私は大きく深呼吸をした。
「はあ。結局皆いなかったね。一体どこにいるんだろ」
「ほかに心当たりはないの?」
「うーん……。あとは武器屋とか、道具屋かな。でも私を置いて先に買い物に行くのも変だし……」
「一応一通り行ってみよう。何か手がかりがあるかもしれないし」
 ルークの言うとおり、ここは片っ端から見て回るしかない。幸い格闘場のように治安の悪い所ではなく、広い大通りに面した場所に店があった。
 だが、どの店もユウリたちが入っていった形跡はなく、店主に聞いてもそんな三人組は来ていないという。もはや手がかりはゼロに等しかった。
 すっかり夜になり、お腹の虫も鳴り始めた。ルークに聞こえてたのではないかと思い、すぐさまお腹を押さえる。
「これ以上遅くなったら魔物も出てくるかもしれない。今日はひとまず僕の家に泊まっていきなよ」
「いや、そこまでお世話になるわけには……」
「あ、ベッドのことなら心配しないで。僕は屋根裏で寝るから、君は僕のベッドで寝てよ」
「そう言う問題じゃなくて……」
「それに、お腹をすかせた君を飢え死にさせるわけには行かない。帰ったらすぐに食事の用意をするよ」
「……っ!」
 どうやら先程のお腹の音を聞かれていたらしく、これ以上反論出来ないまま、今夜一晩泊めてもらうことにしたのだった。


[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ