第3部
サマンオサ
三人の行方
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金は良いからおれたちに付き合えよ」
「!?」
キツネ顔の男性が粘着質な笑みを見せると、今度はピアスの男性が私の顔をまじまじと見る。その顔はカンダタやランシールで会った男性を彷彿とさせ、一瞬にして背筋が凍り付いた。
「いいから離して下さい!!」
私はすぐさま自分の胸ぐらを掴む男性の腕を掴んだ。このまま本当にこの男の腕を折ろうかと怒りを露わにしながらも、騒ぎを起こしたくない気持ちが勝り、必死で我慢する。
「へへ、そういう強がってる女の顔って、そそるんだよなあ。やっぱ少しは痛い目に遭わせた方がいいんじゃねえか?」
「お、いいね。賛成」
ピアスの男性の手までもが、私に近づいてくる。仕方ない、このまま返り討ちにしてやる! そう意気込んで、拳に力を込めようとした時だ。
「ミオ!!」
私を呼ぶその一声が耳に届いた瞬間、男性の身体は重い打撃音を発しながら思い切り吹っ飛ばされた。
ドガシャアアアアン!!
近くの壁に激突したキツネ顔の男性は、そのままくの字になって倒れる。
「な、何だ今のは……?」
うろたえるピアスの男性のすぐ後ろで、目を光らせる怪しい人影が一つ。だが、それを視認できないスピードで、その人影はピアスの男性に向かって思い切り蹴りを叩きこんだ。
ドゴガアアアアン!!
「ぎゃああああっっ!!」
ピアスの男性が私の横をすり抜け、後ろの壁に叩きつけられると、彼はそれきり動かなくなった。
私をかばうように目の前に現れた人影は、ルークであった。その表情には、いつもの穏やかで優しげな雰囲気は微塵も感じられない。助けてもらった身の私ですら、恐怖を抱いたほどだ。
けれど彼は私を一目見るなり、安堵の息を吐いた。
「ミオ、大丈夫!?」
元の表情に戻ったルークに、こちらもほっと胸を撫で下ろす。
「ルーク!! 私は大丈夫……」
「ごめん!! 僕がついていながら君をこんな危険な目に遭わせてしまうなんて!!」
そう言いながらルークは、今にも泣きそうな顔で大仰に頭を下げた。
「大丈夫だよ、ルーク!! 落ち着いて!!」
これじゃあどっちが被害者かわからない。それくらい、今のルークは動揺していた。
そこで初めて、あんな大きな騒ぎがあっても誰も私たちに目に留める人はほとんどいなかったことに気づく。おそらくこういうやりとりですら、ここでは日常茶飯事なのだろう。
「ミオ、あいつらに何かされなかった? 怪我とかしてない?」
「大丈夫だよ。返り討ちにしようと思ってたし。でも、ルークが助けに来てくれたから安心したかな。ありがとう」
「ホントに? やせ我慢とかしてない?」
「大丈夫だって、ほら……。って、え!?」
ルークを安心させるつもりでそう答えたが、なぜかルークの目から涙が溢れ始めたではないか。
「ああ、ダメだ。安
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