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俺様勇者と武闘家日記
第3部
サマンオサ
三人の行方
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席から眺めている。その殆どが男性で、ある者は一心不乱に応援し、またある者は目を血走らせながら罵声を浴びせていた。その誰もが手に掛札を握り締め、一喜一憂している。また、群衆から少し離れた場所では、賭けに負けたのか壁にもたれ掛かって何やら俯いてブツブツ呟いている人も何人か見受けられた。さらにその横のバーカウンターでは、豪快に笑いながらゴールドの入った袋を周囲の人たちに見せびらかしている人の姿もあった。
「なんか……、すごいところだね」
「うん……。噂には聞いてたけどね。僕ら場違い感が半端ないよ」
 私たちはなるべく目立たないように、人ごみに紛れて辺りを歩き回った。けれど、三人の姿はどこにも見当たらない。もしかしたらとは思ったが、ユウリたちがいなくて良かったと安堵した。いるだけでそれなりに目立つ彼らがここにいたら、きっと今頃なにかしらのトラブルに巻き込まれていただろう。
「ねえルーク、いないみたいだから、さっさとここから出よう」
「うん」
 私の言葉に、すぐに頷くルーク。足早にここを去ろうと扉へと続く通路へと向かう最中、何かが私の肩にぶつかった。
「いてえっ!! あー、いてててて!!」
 いきなり大声を上げたので、私は驚いて声のする方を向いた。
 見ると、ぶつかってきたのは大柄で色黒の男性だった。顔には傷があり、耳にはいくつもピアスをしている。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
 あまり関わり合いになりたくないような見た目の男性だったが、私のせいでけがをしてしまったかもしれないと思い、仕方なく男性の横で立ち止まり声をかけた。
「よう、嬢ちゃん。今あんたがぶつかったところ、すげえ痛えんだけど?」
 そう言って自分の腕を指さす男性。だがどう見ても痛くなるほどの怪我をしているとは思えない。
 どうしようかとルークに相談しようと振り返るが、どうやら私に気づかず先に行ってしまっている。まずい、このままだとルークとはぐれてしまう。
「えーと、ごめんなさい!! これ、薬草あげますんで、使ってください!! それじゃ!!」
 私は素早く鞄から薬草を一つ取り出すと、苛立つ様子の男性に強引に押し付けた。そしてそのままルークのところに戻ろうと踵を返した時だった。
 がしっ!!
「待てよ、嬢ちゃん。薬草一つじゃ足んねえよ。あーこりゃ折れたわ。完全に骨イったわ」
「え、でも、全然大丈夫そうですけど……」
 すると、男性の横から別の男性が現れた。その人はずいぶんと細身で、目つきもキツネのように細かった。
「こいつが折れたって言ってんだから間違いねえんだよ!! それなりの落とし前つけてもらわねえと困るんだけどなあ? 嬢ちゃん」
 そう言うと、キツネ顔の男性は私の胸ぐらをつかんだではないか。
「離して下さい!!」
「へえ、よく見りゃ意外とイケてんじゃん。
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