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八条学園騒動記
第七百五十一話 本名じゃないその一

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                本名じゃない
 自宅である作家の本を読んでだ、ベスはこんなことを言った。
「へえ、ペンネームなのね」
「その作家さんそれ使ってるの」
「そうなの。如何にも本名なお名前だけれど」
 ベスはジョーに安楽椅子に座った状態で答えた。
「けれどね」
「それはペンネームで」
「本名はまた違うわ」
「その本名も書いてある?」
「ええ、エチオピア人で」
 国籍の話もした。
「今もエチオピアに住んでいて」
「エチオピア人の名前ね」
「けれどエチオピア風の名前じゃないの」
 ペンネームはというのだ。
「ベトナム風の名前なのよ」
「そうなの」
「だから読んでいてね」 
 今も本を開いている、そのうえでの言葉だ。
「ベトナム人だってね」
「思ってたの」
「作品の舞台ベトナムだし」 
 この国だからだというのだ。
「それでね」
「あんたもそう思ってたの」
「ええ、けれどね」
 それがというのだ。
「全くね」
「違っていたのね」
「そうなのよ、まさかエチオピア人なんて」
「意外だったのね」
「本当にね」
「ペンネームは普通でしょ」
 メグは編みものをしつつ言ってきた、見ればジョーはスマホのゲームに興じていてエイミーはインターネットを検索している。
「誰だってね」
「使ってるわね」
「そうよ、もうね」
 それこそというのだ。
「ウェブ小説でもね」
「普通ね」
「むしろ本名使ってる人なんて」
 ウエブ小説でというのだ。
「いないでしょ」
「そんなものね」
「ええ、ウェブ漫画でもね」
 こちらでもというのだ。
「ペンネーム使っていない人はね」
「いないわね」
「本名で書いている人は」
 それこそという口調で言うのだった。
「ごく少数よ」
「そんなものなのね」
「そうだと思うわ」
「そうなのね」
「あんたもウェブ小説書いてるけれど」
 メグは二番目の妹に彼女のこのことを話した。
「ペンネーム使ってるでしょ」
「そう言われたら」
 ベスもそれはと答えた。
「私もそうね」
「そうでしょ、本名は本名で」
 それでというのだ。
「ペンネームはあっていいのよ」
「そういうものね」
「使って駄目とか」
 そうしたというのだ。
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